ジェンマ4 訓練場と武道派の悪魔

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ジェンマ4 訓練場と武道派の悪魔

 ライラック色の空がまだ薄暗く、空に並ぶ3つの月がまだ淡く輝く時間にメルムは、シトレアに言われた通り、D訓練場に向かっていた。D訓練場はメルムの部屋から早歩きしても35分はかかる距離にある。今は朝の5時なので、訓練場に着くのは5時40分になると、メルムはそう計算しながら、初めて見る授業時間とは全然違う建物の雰囲気を味わい、ゆっくりD訓練場へと進む。  藍白色(あいじろいろ)の光が薄く射し始める頃にメルムは、学内の静けさとは違う訓練場から聞こえてくる訓練音が耳に飛び入る。 `こんな朝から訓練を…?` メルムはそう思い、足の歩みを速めた。  D訓練場に着いたメルムはあまり見たことのない光景に息を飲んだ。そこには、身体能力の高い悪魔たちが、真面目な雰囲気を纏いながらもイキイキとした表情で鍛錬をしていた。稀に生まれる悪魔とはいえ、一つの場所に集まると多く見える。訓練場の端に佇んでいるメルムの陰に気づいたのか、一魔(ひとり)の悪魔がメルムのところに歩き、声をかけた。 「そこの君!誰かを待っているのか?」 声をかけられたメルムはハッと驚き、その悪魔に顔を向けた。 「あっ、その…」 答えに詰まったメルムを見て、その悪魔は首を傾げた。 「もしかして、自由訓練に来てる?」 そう聞かれたメルムは、首を横に振った。 「ち..違います。その…クリソライト先輩はここにいると聞いて、、」 小さい声でそう聞いて来たメルムに、先ほどの悪魔は少し考えてから返事をした。 「クリソライト、か?待ってな。呼んでくる。」 「あっいいえ 呼ばなっっ」 メルムが言葉を終わらす前にその悪魔は先に声を上げた。 「クリソライト!後輩が探してるぞ!」  固まってしまったメルムは、その悪魔の視線の先を目で追った。その視線の先には、顔に流れている汗を片手で拭き、もう片手で剣鉈を握ったクリソライトがいる。肌に密着する袖なしにおへその見える訓練服を着ているクリソライトは、普段の制服では見れないくっきりとした腹筋と細く逞しい筋肉が透けて見える。昨日、初めて会った時の雰囲気と瞳に宿った光を一変させ、鍛練後の荒くなった息で上下に動く腹筋が流れた汗でツヤッと光って見える。その姿は、可愛いという言葉から遠く離れた色気に満ちた雰囲気を放ち、とてもカッコよく見えた。メルムはクリソライトのその姿を見て、知らぬ間に見とれてしまっていた。  呼ばれたクリソライトは、声をかけた友達に視線を向け、メルムの視線とあった。クリソライトは目を見開き、次の瞬間、昨日見せたチャーミングに可愛い笑顔でメルムの所へ歩いた。 「メルムじゃないか?こんな朝にどうっ」 「で?この背の高い後輩君は誰なんだ?」  クリソライトが話し終わる前に、声をかけた友達が話しを遮り、聞いてきた。 「背が高いのは君もだろうが?!」 自分の言葉が遮られたことにイラついたクリソライトはそうツッコミを入れた。 「アハハ そうだな。クリソライトから見れば、周りの悪魔はみんな高いもんなー ちなみに、君何センチ?」 「185センチです。」 「へー俺とほぼ同じだなー ちなみに、俺186センチ」 「はいはい。僕は163センチの小さくて可愛い悪魔だからね。」  可愛い口ぶりで言ったクリソライトの言葉になぜか、からかった方の友達がムスっとした顔になった。 「良く言うゼ…」 「で?結局この子は誰なんだ?」  話しを戻した友達はクエスチョンマークな顔で、クリソライトに聞いた。 「僕のパートナーだよ。」 「へーパートナーねー …えっ?!パートナー??いつから?!」 「大げさな悪魔だね、君。昨日、パートナーになったばかりだよ。」  ポカンとした顔の友達をよそに、クリソライトはメルムに視線を戻し、聞き直した。 「それで?どうしたんだい?こんな朝早く訓練場に来てて…?授業… 、じゃないよね?」 「えっと、、その、、、」  メルムの返事を待ちながら、クリソライトは静かにメルムの反応と動きを観察していた。 「朝食は食べたかい?メルム」  返事に困ったメルムを見て、クリソライトは次の質問を投げた。 「あっ、いいえ。まだ食べてないです。」 「じゃあ、一緒に食べよっか?ちょっと待っててね。僕、クーリングダウンしたら、終わりだから、パパッとクーリングダウンして、着替えてくるね。ここで待ってて」  笑顔でそう言った後、クーリングダウンに行ったクリソライトをメルムは見ることしかできなかった。 「クリソライトにも、ついにパートナーができたのかー」  固まっていたクリソライトの友達はそう呟いた後、メルムの肩をポンと叩いて、言った。 「君も苦労するなー。あっ自己紹介がまだだったな。俺はペルシチだ。よろしく。」  メルムはペルシチと名乗った悪魔に続いて、自己紹介をした。 「初めまして、私は一年B−4クラスのメルムです。」  太陽が昇り始め、薄暗かった空が明るくなって初めて、メルムはペルシチの顔をよく見ることができた。自分の目の前に立っていたのは、聞いていた言葉遣いにがっつりとした体つきにはあまり似合わない、美形な顔立ちを持った悪魔だった。ペルシチは柔らかそうなピーチ色の長い髪をゆるく括り、左肩に流していた。前髪の隙間から覗く瞳は爽やかなミント色で、頭にある2本の角は後頭部の左右から前へとカーブし、生えていた。ペルシチは美形な顔にあまり似合わない、大雑把で強そうな悪魔だった。 「俺はクリソライトの一個上の二年のD―3だ。」 「そうでしたか。あの..さっき言っていた苦労ってどういう意味と聞いてもいいですか?」  メルムの質問に`失言した!`という青ざめた顔になったペルシチは、左右を確認してから言いはぐらかそうとした。 「苦労、、苦労はあれだ!新しいパートナーとか色々と大変だからな。色々と苦労するという意味だ!」  自分の言葉に頷きながら、ペルシチはそう言った。 「そう…ですか?」  納得していない顔をするメルムをペルシチは無理やり納得させた。 「そうに決まってるだろう?ガンバってな!後輩君!」 「…はい。頑張ります?」  ぎこちない雰囲気に黙り込む二魔(ふたり)。しばらくすると、クリソライトは制服に着替え終わって、戻ってきた。 つづく、、、
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