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「コチラ石っころ長者、石っころ長者。この石っころと何かを交換してくれる美女の方~お礼にキスします~」
石っころ長者、はじめました。
石っころ長者というのは、藁を元手に物々交換をして大金持ちになったという有名な「わらしべ長者」のスタートが石っころの事だ。
何を隠そう前回、これで結果的に引ったくり犯に出会い、全財産のピンクの財布を奪い返したんだ!
だから今回もイケるはずだ!!
しかし。
田んぼの中心でセクハラ紛いの事を叫んでみても、カラスがカァカァと鳴くだけだった。
……今回も歩き回るしかなさそうだ。
仕方なく、俺はガタゴトと歩き出した。
まずは、この石っころを何とかする必要がある。
普通ならいらない石も、前回偶然出会った石大好き過ぎて石頭を目指して石で特訓している石ちゃんに交換してもらうことが出来たのだ。
今回だって、きっと何か策があるはずだ!
俺はとりあえず、前回石ちゃんがいた公園に向かうことにした。
***
歩くこと、三十分。
普段デスクワークばかりしている俺の膝は高笑いをしているが、それでも何とか石ちゃんの公園に辿り着いた。
そしてそこには案の定、石ちゃんがいた。
相変わらず、石の看板に頭をぶつけてやがるぜ……。
「石ちゃん、石ちゃん」
声をかけると、石ちゃんは石の看板に頭を打ち付けるというサイコパスな行動をやめ、俺の方を見た。
おぉう、前よりも額が赤く腫れ上がってるじゃないか。前にも思ったけどこれ、絶対にやり方間違ってるよな?
「あ、石くれた兄ちゃん!!」
あれからそこそこ期間が空いたので、石ちゃんが俺の事を覚えているかどうか怪しいところだったが、その心配は不要だったようだ。
「よく覚えてたね」
「うん! 僕、石をくれた人のことは一生忘れないし、尊敬する!」
「尊敬されてんの、俺!?」
まさか、その辺にあった石っころをあげただけで尊敬されるなんて思わなかった。
でもまぁ、価値観は人それぞれだからな……うん。
「で、兄ちゃん、今回も石、くれるの!?」
「う、うん。そうだけど……」
俺は先程、田んぼの畦道で拾った石を石ちゃんに差し出した。
「うわあ! 田んぼの畦道に落ちてたみたいな石だね!!」
「よくわかったな!?」
「僕、石を見ただけでどこの産地の石なのか当てられるよ!」
石ちゃんはどや顔でそう言った。
……どや顔はいいけど、石の"産地"ってなんだろうか……。
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