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「あべっし、かめっ、は、めはっ!」
とそこに、どこかで聞いたことのあるような咳が聞こえてきた。
こ、この咳は!!
「おやまぁ、大丈夫かね」
その声に顔を上げると、大きな飴玉を口に含んだおばあさんがいた。
あ、あのでかい飴玉は!!
やはり間違いない!!
「あ、あぁ……」
俺が声を振り絞ると、おばあさんは
「あれ、あなた前にあったことあるわねぇ」
と言った。
そう、この人は前回の石っころ長者の時に、石ちゃんにもらった飴玉をあげたおばあさんで、「お礼にカニカマ1本を渡す」という行為の先駆者なのだ。
もしかしたら、このおばあさん、またカニカマを持っているかもしれない!!
「カ、カニカマ……を」
俺は最後の力を振り絞った。
カニカマさえあれば、俺は……!
「カニカマを……オイラに分けてくれ……っ!」
「あら、ごめんなさいね。今回はカニカマを他の方にあげたばかりで……もう持ってないのよぉ」
──俺は、力尽きた。
誰だ、俺のカニカマ……持って行った……や……つ……。
「その代わりというわけではないけれど」
「けれど!?」
俺は慌てて体を起こした。
カニカマがなくても俺は生きていけるんだということを悟った瞬間だった。
「これをあげるわねぇ」
おばあさんは、俺に何かを差し出した。
俺が受け取った、それは──……。
梅干しの、種、だった。(食後のやつ)
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