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今度は私からおばさんに声をかける。
横目で見るおばさんの顔は、実年齢よりも老けて見える。
私の母よりも少し若いはずなのに、もうおばあさんのようだった。ずっと気苦労が絶えなかったせいだろう。
「あのね、おばさん……ありがとう」
「私は何もしてないわよ。踏みとどまったのは、涼子ちゃん自身」
「あ、そうじゃなくて、ですね。……十年前のあの時、私を連れて逃げてくれて、ありがとうございました。お陰で、私はこうしてお姉ちゃんのお墓参りに来ることが出来ています。――本当に、ありがとう」
「――っ」
その時、おばさんが静かにこぼした涙は、この世で一番尊いものに見えた。
(了)
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