夏の魔物

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 ――あの日の私は本当にどうかしていた。  姉の無残な死を目撃して以来、精神に変調をきたし医者にかかっていた私だったが、あんなにしまったのは初めてだった。  姉の死に対する気持ちを整理する為に、きちっと浴衣を着て出かけた……までは覚えているが、その後の記憶がどうにも曖昧だ。  巾着の中に残されていたレシートから、どうやら私はわざわざ遠回りをして近所のホームセンターに寄り、ライターとオイルを購入してから神社へ向かったらしいのだが、全く覚えていない。  まるで何かに憑りつかれていたかのようだ。  もしや、亡き姉が怨霊となって私に憑依し、凶行に走らせようとしたのでは……? 等と考えてしまったこともあるが、姉はそんなことを願わないだろうと、すぐに頭からかき消した。  結局、私の焼身自殺及び放火は未遂に終わった。  お祭りは滞りなく終わり、街は日常を取り戻している。私の日常は、飲む薬の種類と量が変わって、少しだけ変化していたけれども。 「おばさん」 「ん? なんだい」
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