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サンデッキの真中に置かれた肘掛け付きのベンチに、芳之の後ろ姿があった。一糸まとわぬ姿で肘掛にしどけなくもたれかかり、じっとしている。緑と反対色の赤く長い髪と白い肌は、何故か美しく背景に溶け込んでいて、宗教画のように侵しがたい、神秘的な雰囲気を醸し出している。
そばに静かに近付いて、そっとバスローブをかけてやる。
「あ…春臣」
彼はゆっくりとサキを振り返る。芳之が呼ぶサキの本名は、いつも甘い響きだ。
「おはよう。起きてたのか」
「うん」
微笑んだその唇にそっとキスをする。
彼は花が綻ぶように笑うと、また外の光景に目をやる。
雨は静かに降り続いている。
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