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家族が私の空になった肉体を取り囲んで泣いていた。
「健康な子に産んであげられなくてごめんね」
と母。
「お前にはたくさん生きてほしかった」
と父。
「お姉ちゃん、戻ってきてよ。また一緒に遊ぼうよ」
と妹。
……嫌だなぁみんな。
そんな悲しい顔しないでよ。
確かに私は死んだけれど、みんなの近くにいるんだよ。
私は慰めようと妹の頭に手を置こうとしたが、すっとすり抜けてしまった。
触れられない。
なんでよ……
私の目からぽたぽたと水が落ちる。
やっぱり死にたくなんてなかったよ。
そのまま家族と一緒においおいと泣いていると、後ろから声をかけてきた人がいた。
「なーにお嬢ちゃん、泣いちゃっているの」
妹に言っているのかしら?
私は声の主を確認すべく、ふっと後ろを向く。
声の主は、私と同じ白いワンピースを着て、白い羽根が映えたおばさんだった。
「あんたに言っているんだよ。あんたに」
おばさんは微笑みながら、私の頭を撫でた。
私は面食らってしまい、ようやく口から出た言葉が、
「あなたは……?」
だった。
「私はね、少し前にこの病院で死んだ人の一人だよ。でも、家族が誰もいなくて誰にも看取られなかったのさ。家族がいるあんたは幸せもんだよ」
とおばさんは答えた。
「で、でも……私まだ生きたかった……」
「しょうがないよ。死んでしまったもんは死んでしまったんだし。人間はみんな死ぬものだよ。だから泣かないの。こっちの世界も楽しいよ。ほら、周りを見てみな」
私はぐっと顔をあげた。
空中には白い羽根が生えた天使達が、ふわふわと飛んでいた。
みんなとても楽しそうに笑っている。
おばさんは私の手をとって言った。
「人間は死んだら天使になれるんだよ。悪くないでしょ?今日からあんたも天使の仲間入りだよ」
私はおばさんと一緒に、ふわりと高く舞い上がった。
私は初めて笑う。
ここも悪くないかも。家族が来るまで気長に待っていよう……
今日から天使、はじめました。
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