特別な夏

母は、ぼくと妹を育てるのに大変な苦労をしている。だから
卒業したら働く、そして母の負担を軽くしてあげたい。

本当は大学に行って、それも有名な大学に入って、周りから
称賛や尊敬の的になりたい。そして卒業後は大企業の社員か
国家公務員になる。

経済的に恵まれた立場を掴む。そうなれれば母や妹を助けて
あげられる。しかし、うちの場合は大学へ進学し、それから
学生生活を送るお金なんか、どう考えてもない。

母一人の給料じゃ無理なんだ。
それでも母は、ぼくに、「大学へ行きたいなら、なんとか
するわ」なんて優しいことばを掛けてくれる。

だけど奨学金を貰って、つまり借金してまで大学へ行くのは
嫌だ。そんなバカなことをするくらいなら独学の方が断然
いい。