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「ある海の店で、すごくお世話になった女性がいるんです。その人は店の厨房を任されてたんですけど、料理がすごく上手くて。俺、胃袋を掴まれちゃったんですよね。今年の夏は、その人がまだいるかどうかわかんないけど……できるなら、もう一度会いたいから俺、またそこへ行こうと思ってるんです」
彼が話し終わるまで、私は息をするのも忘れて、画面に釘付けになっていました。
そんな私を見て、隣の母はニヤニヤとした笑みを浮かべて言います。
「だってさ。今年の夏、どうすんの?」
彼が、またあの店に来てくれるかもしれない。
私と、もう一度会うために。
「……行く。今年も、厨房に入りたい」
ひと夏で終わるはずだったあの人との思い出を、もう一度作りたい。
その後、私たちがどういう関係になったのか――それはまた、別の夏のお話です。
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