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「ねえ、そこのお嬢ちゃん。ちょっとこっち来て。おじちゃんたちと一緒に飲まない?」
と、何やら客席の方から声が飛んできて、私はそちらに注意を向けました。
見ると、ビールを片手に泥酔したおじさんが、こちらに手招きをしています。
「お嬢ちゃん可愛いねえ。おじちゃんのお膝の上においでよ~」
「やめとけって。未成年にちょっかいかけるなよ」
周りの制止も聞かず、上機嫌な様子で私を呼ぶその人に、私はどう対応すべきか迷っていました。
下手に近づけば変な絡まれ方をするかもしれません。
かといって、お客様を無視することもできません。
厨房から顔だけを出したまま固まっているうちに、やがて痺れを切らしたのか、その人の声と顔つきは次第に荒々しいものとなっていきます。
「おい、早くこっちに来いって。客が呼んでるんだぞ!」
明らかに気分を害した様子で、真っ赤な顔をしたその人は鬼の形相で私に命令します。
怒号が店内に響き渡り、これはいよいよ何とかしないとまずいということで、私は恐る恐る足を踏み出しました。
しかし、
「はいはーい、オーダーお待たせしましたー! ご注文お伺いしますよー!」
と、私の前を遮るようにして、どこからともなく彼が現れました。
「わっ。なんだよお前」
「すんませんねー。野郎はお嫌いですかー?」
彼は冗談を交えながら、その場を上手く取り繕ってくれます。
その後は周りの協力もあり、最終的には何とか大事にならずに済んだのでした。
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