どうも、アレの付喪神です。

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 どうにも俺は今日から、付喪神というものになったらしい。  付喪神始めました、なんて言うのもおかしな話だが。今日の朝が来てから急に頭がすっきりしていろいろ考えられるようになったんだから、多分そういうことなんだろう。  まあ頭、ないんだけどさ。  どうも俺、漫画の原稿用紙というヤツです。  主であるOL・アリサのところに買われたヤツです。ヤツときたら“今年こそ夏の祭典に新刊出すぞうおおおお!”とか“腹黒主人公攻めは至高だろうがーい!!!”とか叫びながら一向に原稿に手をつける気配がありません。  ていうか、印刷所の納品期日迫ってんだろうが。あと一ヶ月しかないってのに、なんでネームも終わってないんだアホか。 ――これじゃ今回も、間に合わねえ!  俺は考えた。  このままでは今年も俺はまた、まっさらな原稿のまま机の隅で埃をかぶることになる!そんなのごめんだ、俺らは絵を描いて使って貰ってナンボなんだよ。たとえそこに描かれるのが腐女子が考えた最強の男同士のあっはんうっふんな絵であったとしてもだ! 「あー……やっぱりいいわー。ウーバル・ハーツの久遠様最高だわー……」  おいてめえ、と俺は机の上から女を睨んだ。今年こそは新刊を!とか言いながら何故せっかくの休日に、布団の上でゴロゴロして漫画を読んでいるのか。しかも、その漫画はちょっと前に買ったばかりのやつだろう。今回同人誌で描こうと思っているのとは別ジャンル。そいつにハマりこんだせいで、次に出す新刊のことをすっかり忘れられてはたまったもんではない。 ――おいなんでこのタイミングで別ジャンルに手を出すんだよ!次の新刊はタツマキナインだろうが、ふざけんな!  が、しかし。付喪神になったとて、俺はあくまでただの漫画の原稿用紙だ。何でだかものを見たり聞いたり考えたりってことはできるらしいが、口ってものは装備されてない。いくら文句を言いたくても、そこのぐーたら腐女子に声を届けることなどできないのだ。 「ねぶい……久遠様とマコト君のCPの夢とか見られんかな。二人のデートを遠目から見つめる不審者モブ女その1になりたい……」  わけのわからんことを言いながら、布団の中にもごもごと戻ってくる女。  こうなっては仕方ない、奥の手を使うことにしよう。 「おいお前ら!見てんだろこの状況!」  俺は、女の周辺にいる――アレやらコレやらの付喪神達に声をかけた。 「お前らが困ってる時には助けてやる!だから頼む、今回は……俺に協力してくれぇぇぇ!」
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