十四.「あやしい絵展」

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十四.「あやしい絵展」

「"あやしい"ものに会いたい人、手ェ挙げて!!」 「はい!!」  やって来たのは竹橋駅すぐの東京国立近代美術館で行なっている「あやしい絵展」。ここに行けば古今東西の"あやしい"もの全てに会うことが出来ます。人ならざるものには勿論、西洋文化の影響で「ファム・ファタル」ーーーつまり「宿命の女」「魔性の女」という概念も入り、男を惑わす妖しい美しさを持つ女性、浮世絵とも違う美しい女性の絵が多く展示されています。   468abc9b-9d47-4e43-9782-4abd811db2a2  こちらは1916年に描かれた甲斐圧楠音の「横櫛」。浮世絵や従来の西洋絵とも違う、美しいがそれだけでは無い、蠱惑的幽鬼的なものを感じませんか? こんなに美しい彼女は実は「切られお富」と呼ばれた殺人も辞さない悪女なんですよ……他にも鏑木清方による泉鏡花著「高野聖」の挿絵、水島爾保布による谷崎潤一郎の「人魚の嘆き」の挿絵、小村雪岱による邦枝完二の「お傳地獄」の挿絵等々……水島爾保布はタッチがビアズリーに似ているのですが、そのビアズリーによる「サロメ」の挿絵も有りました。怖い! 妖しい! 退廃的!  本展の目玉は4月4日までの期間限定展示である、上村松園の「焔」。こちらの絵です。葉書ですが。   740beb83-7463-4f5e-9560-29f64ece4092  この絵は「源氏物語」の六条御息所からインスピレーションを得たと言われ、嫉妬する女人の白眼には金泥が入っている能面に倣って目には金箔を施しているそう。ショーケース越しでは分からなかったのですが←、なるほど、良いこと聞いた!  他にも青木繁による古事記ものや「みだれ髪」の装填、明治時代の「美人画」まで"あやしい"存在や美しさ、女性がいっぱい。コロナコロナコロナ……の憂鬱なこの頃ですが、少し肩の力を抜いて美しくも魔性の女性たちに会いに行きませんか? 美しい桜の樹の下には死体が埋まっていると言うなら美しい女性の絵には人を惹きつける魔力が有るのですよ。
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