15人が本棚に入れています
本棚に追加
二十三.「デミタスカップの愉しみ」
独り暮らしを始めてはや1年半。家事を1から10まで自分1人で取り仕切るようになるとたまの外食とか今風にデリバリーとかおやつといった家事、つまり「いつかはしなければならない家の義務」以外のことが極上の楽しみになって来ます。
自分の場合はその頃急にコーヒーを飲めるようになったので「家でコーヒーを飲む」ことが今1番の楽しみです。休みの日は家でコーヒーを飲む、と考えるとお家時間が俄然楽しくなり、仕事でもハリが出るようになりました。コーヒーが傍に有る休みの日は家篭り生活に潤いを齎してくれます。
それは昔の人も同じだったことを、この展示会で再確認しました。
渋谷区の松濤美術館でおこなれている「デミタスカップの愉しみ」展です。デミタスカップとは普通のマグカップの半分くらいの大きさのカップです。19世紀の初め、ナポレオン1世が大陸封鎖令を出し、コーヒー豆が極度に不足してしまったイタリアのカフェで生まれました。つまりコーヒー大好きなイタリア人の「ちょっとの豆でも美味しいコーヒーが飲みたい!」という切実な願いからの発明でした。
イタリアで生まれたデミタスカップは欧米各国に渡り、貴族や富裕層に愛されました。ーーーそう、この当時貴族や富裕層の間では中国趣味と日本趣味、アール・ヌーヴォやアール・デコが大流行をしていました。大好きなコーヒーを最先端の流行で飲む! これぞ! 貴族の! ステータス!! と言わんばかりにデミタスカップは異国情緒に満ち溢れています。絵は美しく、金銀は神々しく、気品に溢れています。まるで貴婦人のドレスのよう……こんな器でコーヒーを飲めたら生活がいやでも優雅になれそうです←
菊紋があしらわれたカップとソーサー。色が落ち着いているので壮年の婦人が愛用していたかも?
ほとんどのデミタスカップは陶器製ですが、こちらはガラス製。それもボヘミアンやヴェネツィアンガラスなのでやはり高価。ガラス製は水出しコーヒーやフローズンコーヒーを飲む時に使っていたそう。冷たいものが出せる、というのも貴族のステータスだったに違いありません。
気品と優雅さ溢れるデミタスカップが多い中、野菜やサイコロをモチーフにした面白系デミタスカップも存在していました。中にまんまフルーツや野菜じゃん!? なものも。……しかしこれらはどういう場で出したのだろうか。ウケ狙いか?
野菜とフルーツ、サイコロデミタスカップはウケ狙いだったに違いありませんが←、コーヒーを飲み干したら底に描かれた景色が楽しめます〜というのはきっと上品なウケ狙いに違いありません。花だったり、建物だったり……中には恋人たちの逢瀬が描かれていたのがあり、なんだか神様になった気分でした。
デミタスカップをたくさん見た後はコーヒーを飲みたくなりました。といってもデミタスカップではなく、マグカップだしコーヒーに拘りが無いのでカルディのインスタントでミルクをどばっ、と入れますがそれでもコーヒーを楽しんでいることには変わりありません。どうか第2のナポレオンがしゃしゃり出てきませんようにと祈りながら今日もコーヒーを飲むのでした。
最初のコメントを投稿しよう!