三十五.特別展「ポンペイ」

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三十五.特別展「ポンペイ」

 職場から無料観覧券を貰ったので東京国立博物館で開催している特別展「ポンペイ」に行ってきました。平日ですが世間様は春休みであることを忘れていたので恩賜公園の人混みに吃驚しました。同じことは去年もやっています。今年の花見は上野恩賜公園と新宿御苑になりそうです。……いや新宿御苑はその前に散っているかも知れない。  なので東京国立博物館も混雑していました。事前予約していてほんと良かった〜……コロナが無事撲滅してもこの予約システム自体は残って良いと思います。 37d72e64-ebca-47fb-b0d0-a52cc57562e4  ポンペイ、といえば史上初、自然災害で消滅した都市。1500年以上も灰に埋もれ、16世紀頃から本格的な発掘が開始されました。ちなみにポンペイ遺跡の存在は水道工事をきっかけにで少しずつ知れ渡ったそうです。文明の利器ですね。  本展はポンペイ遺跡を保存所蔵するナポリ国立考古学博物館の協力のもと、ポンペイの文化と人々の生活が展示されています。入ると初っ端からCGで「あの時何が起こったのか?」映像が流れます。火山灰が街に迫り来る様子が群に迫っているので注意が必要です。私は3.11を思い出してちょっと怖かったです。ましてや最近地震も多いし……しかもその直ぐ側には女性犠牲者の石膏像が。火砕流の速さは時速100km以上で到底人間は逃げられません。ポンペイ市民全員が逃げる間も無く生き埋めになりました。死んだ後、遺体が腐敗消滅し出来た空洞に石膏を流して復元完了したのが私が見た女性の石膏像です。こんな胸を抉る展示は初めてだよ。  ポンペイは紀元前89年にローマによって征服され、以後商業都市として発展しました。ワインの栽培が盛んだったようでワイン保存の壺とか非常に綺麗な形を保って遺されていました。非常に計画的に整備された都市でも有り、碁盤の目状に通りが有り、広場もあるし、ローマ人大好き円形劇場も有ったことが分かっています。流石ローマ! ローマに匹敵するのはギリシャとエジプトぐらい!? 2f5e49e0-8006-4602-81af-51db635af5be  こちらは何だか分かりますか? 実はこれ、ユリア・フェリクスという裕福な女性による「5年間、フェリクス家の2階の部屋を貸します」という賃貸案内です。風呂もついているし、かなり条件は良いと思います。そう、ポンペイの裕福な女性は字の読み書きが出来た上に男性顔負けの実力を持っていたのです。実際実業家だった女性もいたようです。家を取り仕切る女主人になった既婚女性は非常に尊敬されたのです。……未婚女性、肩身狭ーい!  他にもアクセサリーや医療道具も発掘されています。医療道具はかなり作りが良く、技術も非常に高かったと思われています。……もしかして現代とあまり変わらない診察が出来ていた? 無かったのって麻酔だけ?  ポンペイの遺跡で名高く、かつポンペイ繁栄の歴史を伝える家はモザイク画の至宝と呼ばれる「アレクサンドロス大王のモザイク」を所蔵していたと言われるファウヌス家、「竪琴奏者の家」、床モザイク画「猛犬注意」で有名な「悲劇詩人の家」の3つです。「アレクサンドロス大王のモザイク」は現在ナポリで修復作業中ですが、いつか本物が見たいなあ。 93df7e86-1c95-4bf9-99b2-cd483f4f1421  知る人ぞ知る炭化したパンや果物です。お土産のポーチになったりしてもはやネタ扱いですが、これを見た時私はつん、と目の奥が熱くなりました。噴火が有ったのは1時ごろと言われお昼時でした。逃げることも出来ず何が起こったのか分からないまま死んでしまった、いきなり明日が無くなってしまって、本当にどんな気持ちで火砕流に埋もれてしまったのだろうと考えたら悲しくなりました。火砕流は滅多に無い現象と言われていますが火山国日本にだってこれはあり得たかも知れない、と思うと……  考古学の1つに災害考古学、という学問が有ります。名前の通り遺跡から災害の痕跡を辿ることなのですがポンペイの遺跡を発掘すればより火山被害の様子が分かり、将来、災害防止に繋がるかも知れないと有りました。遺跡の発掘はもはや歴史を伝えることだけに在らず。日本にももっとこの考えが広まれば良い。  少しでも早くポンペイ都市の全貌が明らかになりますように。そしたらいきなり死んでしまった名もない沢山のポンペイ市民たちは「忘却」というもう1つの死から永遠に逃れられる。
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