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「続いてのニュースです。
SNS発の大人気ロックバンド ブレイドエースの
デビュー曲売り上げが100万枚を突破しました」
ここまで聞いて、藤原はそっとテレビを消した。
「すげぇよ、ブレイドエースは。さすが俺が認めたバンドだ。
ストリートからメジャーだろ? いやぁ......」
藤原明雄 26歳無職。
高校卒業以降、アルバイトをいくつか転々としていたが、
度重なるミスでそば屋のねぎ乗せバイトをクビになった2ヶ月前を境に、
働く気も失せたらしい。
こんな男でも少年時代には立派な夢を持っていた。
それは、宇宙に行くこと。
藤原を男手一つで育ててきた父親が
宇宙飛行士を務めていた影響であろう。
高校進学を機に藤原は親元を離れ、一人暮らしを始めた。
父親とは時の経過とともに疎遠になり、
今ではお互いにどこに住んでいるのか、何をしているのかすらも分からない。また、抱いていた野望も自然と消え去っていった。
だが、先ほどのニュースを見て、藤原の夢を追う気持ちが再燃した。
「宇宙ってどうしたら行けんのかな。全く見当つかねぇや。
分かんねぇけど、ここは一回ブレイドエースにあやかってみるか」
2099年4月2日
フリーター藤原 ストリート宇宙飛行士はじめました。
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