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再興
「包囲され、物資もなく、飢えで苦しみ、反抗する活力もないまま殲滅される...あの華の第2師団と言われた我々がこのザマか...」
師団長の乾いた声が指揮所に響いた。
それに対し、参謀達は何も言えず、ただ蹲るだけだった。
カッカッカッ...
革靴の音が近付いてくる
ドン!
「第2師団指揮所はここであってるか!?」
勢いよく開いたドアの音と共に威勢の良い声が飛んできた。
師団長は下を向いたた答える
「いかにも。ここが敵に包囲され壊滅寸前になり指揮系統が麻痺し役割を果たしてない指揮所だが、何か。」
「顔をあげろ、参謀達もだ。帝国軍人として恥ずかしくないのか。」
その言葉にハッとさせられ皆重々しく顔をあげるとそこには我々とは似ても似つかない程華々しい軍服を身に纏った女性がいた。
参謀達の戸惑う声が聞こえる。「なぜ、どうやってこのような場所に上級官が迷い込んだのか」...と
師団長は立ち、服の乱れを直し深々とお辞儀をして問う
「僭越ながらお聞きしますが、貴女は何処の所属でありますか。」
「フッ、まぁそう堅くなる必要はない、私の役職はもうない。」
「それなどういう...」
「私は北方方面軍第8軍団長だったが、司令塔が敵爆撃機により破壊され、最終防衛線も突破された。それで逃げ込んできた先がここだった訳だ。」
!?
その言葉に全体がどよめいた。なぜなら北方方面軍は第2師団が所属していた軍であり、敵国ヴィーナス王国の最前線の地であった。その為総司令部から出された命令は「死守」のみでありそれが突破されたという事は帝国の死を意味していた。
「では、北方方面軍の参謀達は...」
「あぁ、全員死んだよ。私は部下と後方拠点の視察に行ってたから助かったが、ここに来る途中でそれも殆ど失ってしまった。もうすぐ生き残りが到着する時間になるんだが...」
この絶望の淵で彼女はやけに冷静で淡々と喋っていた。
「あの、1ついいですか。」
口を開いたのは第2師団の参謀の一人だった。
「ん?なんだい?」
「私の記憶が正しければ第8軍団長は流行病で倒れ席が空いていたとお聞きしたのですが」
「あー...」
彼女は顔をしかめ、少し困った様な表情を浮かべた。
「それは嘘なんだよ。」
少しの静寂のあと彼女はそう答えた
「それは一体...」
「まぁ、それは後でも出来るじゃないか。今は過ぎた事よりこれからの事を考えるべきだ。丁度私の部下達も到着したみたいだよ」
それまで話に夢中で全く気付かなったが、振り向くと後続が見えない程の大軍が第2師団指揮所に押し寄せていた。
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