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告白
去年のクラスメートから告白された。
ほとんど話をした記憶がないから、何がきっかけで俺を好きになってくれたのか見当がつかない。動揺しすぎて何も聞けなかった。きちんと返事をしたいから一週間時間が欲しいと言ってその場は解散した。
2組の橋爪さん。1年の時に同じクラスだったけど今年は別のクラスだ。去年の記憶を検索してみる。文化祭、体育祭、合唱コンクール…特に何も接点がない。本当になんで俺だったんだろう。
橋爪さんってどんな子だったっけ。実際のところ印象に残るタイプではない。フルネームもさっき「クラスのしおり」で確認してはじめて知った。橋爪香帆って言うんだ。キレイな名前だ。
大人しい子だったよな。気が弱そうな感じではないけど、目立つタイプでもない。いつも友達何人かと一緒に弁当食べてた記憶はある。部活はなんだったっけ。
そういえば橋爪さんは文化祭でやった和風カフェのお品書きを書いてた。字が上手かったのかも。じゃあ選択科目は書道だったのだろうか。カフェで抹茶も点ててたかな。部活は茶道部なのだろうか。ヤバイ俺ほんとに何も知らない。
橋爪さんは俺のどこが気に入ったのだろう。身長も体重もたぶん標準くらい。顔は10段階評価で3~8のどれか。頭のデキもほぼ真ん中。部活はハードだけど地味なバドミントン部。
女子から好かれる要素が思いつかない。俺って本当に普通なんだ、なんか凹む。特技とか趣味もないし。
橋爪さんのことが好きかどうか以前に、俺は高校に入ってから誰かを好きになったことがないかも。いいなと思った子はいたかもしれないけどその程度だ。野郎ばっかでつるんでて、それが楽しくて、深くは考えてなかった。
俺は橋爪さんのことをどう思ってるんだろう。好きだと言われて嬉しかったし、嫌じゃなかった。それを好きと言うのか。そもそも好きって何なんだ。好きだって言ったら付き合うことになるのか。付き合うって何すればいいんだ…
うだうだ考えていたら眠ってしまったらしい。気づいたら朝だった。寝癖がなおらなくてシャワーしてしまった。母さんと姉ちゃんがニヤニヤしているのを無視して家を出る。
電車の中でも橋爪さんのことを考えていた。橋爪さんは電車通学じゃなかった気がする。バスかな自転車だったかな。家はどこなのだろう。
電車を降りて歩いていたら、バスから降りてきた橋爪さんを見つけた。近づいて思いきって声をかけてみた。
橋爪さんは振り向いて、
びっくりして、
恥ずかしそうに、
おはようと言った。
可愛い。
大きな目が嬉しそうに笑った。
こんなに可愛い子だったっけ。
たぶん俺も今むちゃくちゃ嬉しそうな顔をしてる。
そして毎朝一緒にいろんな話がしたいなと思ってる。
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