北西階段

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北西階段

昼休み、図書委員の栞ちゃんに付き添って図書室に行く。栞ちゃんは近い南西階段を使わない。わざわざ北西階段をつかって、三階の北棟の廊下を歩く。 三階、3年生の教室の前、何回通っても緊張する。図書室に行くだけ、そんな顔をしながら、栞ちゃんは3年5組の教室の前を通る。 いつもの窓際の席に、先輩はいなかった。 図書室のカウンターで仕事をする栞ちゃんを待ちながら、私は本を立読みする。地学の棚の前で天体の本を興味もないのに開く。 「稲葉は熱心だな、天体部に来ればいいのに」 柿本先生の声がして振り返る。 「考えときます」と答える。 私は栞ちゃんの付き添いで来てるだけなんで、そんな顔をしながら。
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