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「今度はなんだ?」
男はじろりと伊吹を睨んだ。
「どうしてあんたがここに!?」
涼香も突然の伊吹の登場に驚いた。
「話は全て六汰から聞いた。この骨董品屋は表向きで、本当は日本の絵師や陶芸師から安く買った品物を、高級品だと嘘をついて海外の連中に高く密売しているという話をな。
このことが世間に知れ渡ればお前はどうなる?」
「ふん、それが事実だとして、そんな証拠がどこにあるってんだよ!」
男は開き直った様子だった。
「今、お前が言った言葉しっかりと録音させてもらったぞ。」
伊吹は着物の裾から小さな小鳥を取り出した。
「なに?あれ?」
涼香も菖蒲も目を丸くした。
「この鳥は鸚鵡と言って、人間の言葉をそっくりそのまましゃべることができる。」
「けっ!そんな鳥一匹に何ができるって言うんだよ!?」
男はバカにしたように言った。
すると突然、鸚鵡が喋り出した。
「「ふん、それが事実だとして、そんな証拠がどこにあるってんだよ!」」
涼香も菖蒲も唖然とした。
その鸚鵡の声は骨董品屋の亭主の声そのものだったからである。
「な、なんなんだよ、その鳥は?」
さすがの男も焦った様子を見せた。
「この鸚鵡は普通の鳥と少し違っていてな、色んな人間の声を証拠として再現できるように声帯の修行を積んでいるんだ。もちろん、お前が六汰に言った言葉もすべて記憶させてある。」
男は完全に焦っており、言葉も出てこないといった様子だ。
「その絵を最後に、今後一切、六汰と六汰の家族に関わらないと約束するならこのことは秘密にしておいてやる。」
伊吹の言葉に男は完全に怯んでしまった。
「わ、分かったよ!だから、このことは秘密にしてくれ!頼む!」
そして、両手を合わせて伊吹に懇願した。
「分かった。」
そんな伊吹たちの様子を菖蒲は外から茫然と見ていた。
「す、すげ~、何者だ、あいつ・・?」
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