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「あの鸚鵡は少し特殊な鸚鵡なんだ。ほんの少しの細かい声帯の変化までコントロールできるように躾されたもので、きちんと人間の声を再現できるようになるには十年以上はかかると言われている。」
菖蒲の質問に、伊吹は淡々と答える。
「へ~!すげ~な!けど、あんたも結局あの女が気になって来たんだな!案外いい奴なんじゃないの?」
菖蒲の問いかけに涼香はギョッとした。
「いや、以前からあの骨董品屋のことは気になっていたんだ。」
冷静に伊吹が答える。
「それじゃあ、あの骨董品屋の亭主、あのまま放っておいて良かったのか?」
「そうよ!あんたの鸚鵡も証拠を掴んだんだから、お縄にかけられても良かったのにどうしてそうしなかったの?」
二人は不思議そうな顔で伊吹を見つめた。
そんな二人を尻目に伊吹は言った。
「確かに、あの絵は一見しても本物とは区別がつかないほどの贋作だ。しかし、有り合わせの材料で作った物は本物の目利きが見れば一目瞭然。ましてや、いつも六汰の父親の絵を買っている者が見れば・・・。」
「っていうことは、わざとあの男を見逃したのか?」
菖蒲の言葉に伊吹は頷いた。
「もし、今まで多額の金で取引していた人物が、偽物を売買しようとしているということになればあの男の命はないな。むしろ、お縄にかけられるよりも悲惨な運命が待っているかもしれない。」
「なるほど。」
「想像するだけで怖いぜ~。」
二人は納得した様子で頷いた。
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