第六話 「よみがえる記憶」

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涼香の問いかけに伊吹は頷いた。 「お前は昔から泳げない癖に何やってるんだ。だからあんな無茶をする前に、もっとほかの作戦を考えようと言ったんだ。」 「へ?それじゃあ、仔猫を見殺しにするって意味で言ったんじゃなかったの?」 「本当に最後まで人の話を聞かない奴だ。」 伊吹は呆れた様子だった。 一方、涼香は自分の勘違いが分かり、急に恥ずかしくなった。 (そうだったんだ!あたしったらまた一人で勘違いして!恥ずかし~!) 「とにかく、無事に任務は完了したということになる。暗くなる前に、早くこの森を抜けるぞ。」 「うん。」 二人は仔猫を連れて下山した。 「あのさ、もしかしてあんた、昔も川で溺れたあたしの事助けてくれたことない?」 「何だ、今更。昔の話か?」 「いや、覚えてないんならいいんだけど。」 その後、二人は無言で山道を下った。 (あのときの感覚、やっぱり覚えてる。・・ってことは、やっぱりこいつが本物の“伊吹”なの?) 「涼香。」 「なっ、何!?」 涼香は急に名を呼ばれ、驚いた。 「やっぱり、お前今でも泳げないんだな。」 「・・・へ・・・?」 伊吹は涼香の方を振り向いた。 「カナヅチのくせに、本当に昔から無鉄砲な奴だ。」 伊吹はクスッと微かに優しい笑みを浮かべた。 それは、再会してから涼香が初めて見る伊吹の笑顔だった。 涼香は思わず、ドキンッと胸が高鳴った。 (へ?何!?何で、急に笑うの!?っていうか“ドキッ”って何!?) 自身のよく分からない感情に戸惑う涼香なのであった。 「とりあえず、助けてくれてありがとう。」 「ああ。」 照れながらも、素直にお礼を言う涼香なのであった。 「お~い!涼香~!伊吹~!無事か~!!」 すると、そこへ菖蒲が助六を連れて走って来た。
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