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涼香の問いかけに伊吹は頷いた。
「お前は昔から泳げない癖に何やってるんだ。だからあんな無茶をする前に、もっとほかの作戦を考えようと言ったんだ。」
「へ?それじゃあ、仔猫を見殺しにするって意味で言ったんじゃなかったの?」
「本当に最後まで人の話を聞かない奴だ。」
伊吹は呆れた様子だった。
一方、涼香は自分の勘違いが分かり、急に恥ずかしくなった。
(そうだったんだ!あたしったらまた一人で勘違いして!恥ずかし~!)
「とにかく、無事に任務は完了したということになる。暗くなる前に、早くこの森を抜けるぞ。」
「うん。」
二人は仔猫を連れて下山した。
「あのさ、もしかしてあんた、昔も川で溺れたあたしの事助けてくれたことない?」
「何だ、今更。昔の話か?」
「いや、覚えてないんならいいんだけど。」
その後、二人は無言で山道を下った。
(あのときの感覚、やっぱり覚えてる。・・ってことは、やっぱりこいつが本物の“伊吹”なの?)
「涼香。」
「なっ、何!?」
涼香は急に名を呼ばれ、驚いた。
「やっぱり、お前今でも泳げないんだな。」
「・・・へ・・・?」
伊吹は涼香の方を振り向いた。
「カナヅチのくせに、本当に昔から無鉄砲な奴だ。」
伊吹はクスッと微かに優しい笑みを浮かべた。
それは、再会してから涼香が初めて見る伊吹の笑顔だった。
涼香は思わず、ドキンッと胸が高鳴った。
(へ?何!?何で、急に笑うの!?っていうか“ドキッ”って何!?)
自身のよく分からない感情に戸惑う涼香なのであった。
「とりあえず、助けてくれてありがとう。」
「ああ。」
照れながらも、素直にお礼を言う涼香なのであった。
「お~い!涼香~!伊吹~!無事か~!!」
すると、そこへ菖蒲が助六を連れて走って来た。
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