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第七話 「楊貴妃の秘密を探れ!」
「はぁ~、今日もいい天気ね~。」
のどかな昼下がり。
昌美は竜胆家の茶の間で、お茶を啜っていた。
「しかしま~、全く依頼が来ないってのも考え物だよな~。」
菖蒲が煎餅を齧りながら言った。
「そうよ・・・、どうして!?なんで、七話までまともな依頼が来ないのよ~!!」
昌美は卓袱台を両手でバンッと叩いた。
「そりゃ~、毎回ボランティア活動ばっかりしてちゃ~ね~。」
菖蒲はまるで他人事のように言った。
「そればかりじゃないわ!前回の猫探しの一件以来、大きいイノシシが一匹図々しく居候してるせいで、我が家の家系は益々苦しくなったわ!どうしてくれるのよ!?」
昌美は菖蒲をじろりと睨んだ。
「いや~、そんなことをあたいに言われてもな~・・。」
「あんた飼い主でしょ!?何とかしてちょうだいよ!?餌代はかかるし、暇さえあれば町の女の子をナンパして!これじゃあ、益々“ぴゅんぴゅん丸”の評判が悪くなる一方だわ。
どう責任とってくれるのよ?」
「“どう?”って言われてもな~。」
菖蒲は困ったような笑みを浮かべた。
前回の一件以来、助六はすっかりと、竜胆家に居候していた。
おまけに庭に、“マイホーム”と称して自分専用の小屋まで作ってしまう始末だ。
「あんたといい、涼香といい、どうしてこう、問題ばかり起こすの?もう、うちの万屋はおしまいだわ・・。」
昌美は頭を抱えた。
「そんなに落ち込むなって、昌美さん~!」
「誰のせいでこんなに落ち込んでると思ってるのよ?」
「ええ?いや、あ~・・、そういえば涼香はどうしたんだ?」
菖蒲は露骨に話を逸らした。
「ああ、あの子は伊吹君と町の薬屋に言ったわよ。」
「薬屋?どっか怪我でもしたのか?」
「違うわ。伊吹君、長屋に住んでるんだけど、大家に支払う家賃を稼ぐ為に、依頼の来ない日は町の薬屋でアルバイトをしてるのよ。」
「へ~、まぁ、この万屋じゃアルバイトじゃなくて正社員と変わらない位稼がなきゃ長屋の家賃は払えないだろうな!」
「ええ。そうね、誰かさんのせいでね!!」
ヘラヘラと笑いながら言う菖蒲を昌美は睨んだ。
「でも、何で涼香も薬屋に行ったんだ?この万屋は借金でもあるのか?」
「違うわよ!失礼ね!伊吹君は薬の調合に詳しいから、少しでも勉強になるようにって付いて行ったのよ!」
「あの、涼香が勉強ね~。」
菖蒲はバカにしたように笑った。
「そういうことだから!菖蒲、このまま依頼が来ないようなら、これからはうちに住んでる分、家賃を払ってもらいますからね!!」
「え~!?マジかよ!?」
「当たり前よ!もちろん、あんたが庭で飼ってるイノシシの分もね!!」
「なんであたいが助六の分まで!!」
「あんたの連れてきたイノシシでしょ?飼い主なら責任を取りなさい!!」
「そんな~!!」
菖蒲はガクリと肩を落とした。
そのころ、涼香と伊吹は町の薬屋に来ていた。
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