第一話 「万屋は今日も大赤字!!」

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そして、もう一発少年の頬を殴ろうとした、その時。 「もう、止めてあげて!!一発殴ったんだからそれで十分でしょ!?」 見かねた涼香が止めに入った。 「何だ、お前?関係ない奴は引っ込んでろ!!」 「この子はまだ子どもなのよ?そんなに殴ったら死んじゃうじゃない!!」 「うるせ~!俺は今無性に腹が立ってるんだよ!どうしても邪魔するっていうならお前も容赦しねぇぞ!!」 男は思いっきり拳を振り上げた。 (まずい!殴られる!!) 涼香はこのあと味わうであろう痛みを想像して、ギュッと目を閉じた。 しかし、いつまで経っても男に殴られる気配はない。 恐る恐る目を開けてみると・・・・。 男が拳を振り下ろす寸前で、見知らぬ青年が男の腕を掴んでいた。 「何だ?お前もこいつらの仲間か?」 男の質問に謎の青年は口を開いた。 「こんな街中で女、子供を殴るなんて最低だな。このあたりも随分物騒な街になったものだ・・」 「ごちゃごちゃうるせ~んだよ!!」 男は思いっきり拳を振り上げた。 しかし、彼ははいとも簡単にその拳をかわした。 「・・お前、一体何者だ・・?」 さすがの男も、彼の並外れた素早い動きに戸惑いはじめた。 「何者かお前に名乗る義理はない。ただ、一度だけ言う。命が惜しければ、今すぐこの場からうせろ。」 「・・・・分かったよ・・・、ちぇっ!!」 彼の只ならぬ雰囲気に、男は刀を拾うと尻尾を巻いて逃げて行った。 (・・・この人、すごく強い・・。) 涼香は立ち上がり、すぐさま彼にお礼を言った。 「あの、危ないところを助けていただいてありがとうございます・・。」 そして、彼の顔をまじまじと見つめた。 背は涼香よりも高く、するりと長身で驚くほどの美男子だった。 (この人、めちゃくちゃカッコいい・・!!) あまりの格好よさに、思わず涼香は見とれてしまった。 「いや、別にお礼を言われるまででもない。」 彼は黒縁のメガネをクイッと上げながら言った。 「それよりも、あの子どもをどうにかした方がいいんじゃないか?」 そして彼は先ほど男に殴られた少年を見ながら言った。 「そうだった!!ちょっと、あんた大丈夫?」 涼香ははっとし、倒れている少年に駆け寄り声をかけた。 「・・・助けに・・行かなきゃ・・・。」 少年はうっすらと目を開けた後ポツリと呟いた。 「助けるって一体何を?」 涼香の質問に、少年は目を逸らしながら答えた。 「・・・妹がさらわれたんだ・・。だから、早く助けに行かないと・・。」 少年の言葉を聞き、涼香と謎の青年は顔を見合わせた。
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