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そして、もう一発少年の頬を殴ろうとした、その時。
「もう、止めてあげて!!一発殴ったんだからそれで十分でしょ!?」
見かねた涼香が止めに入った。
「何だ、お前?関係ない奴は引っ込んでろ!!」
「この子はまだ子どもなのよ?そんなに殴ったら死んじゃうじゃない!!」
「うるせ~!俺は今無性に腹が立ってるんだよ!どうしても邪魔するっていうならお前も容赦しねぇぞ!!」
男は思いっきり拳を振り上げた。
(まずい!殴られる!!)
涼香はこのあと味わうであろう痛みを想像して、ギュッと目を閉じた。
しかし、いつまで経っても男に殴られる気配はない。
恐る恐る目を開けてみると・・・・。
男が拳を振り下ろす寸前で、見知らぬ青年が男の腕を掴んでいた。
「何だ?お前もこいつらの仲間か?」
男の質問に謎の青年は口を開いた。
「こんな街中で女、子供を殴るなんて最低だな。このあたりも随分物騒な街になったものだ・・」
「ごちゃごちゃうるせ~んだよ!!」
男は思いっきり拳を振り上げた。
しかし、彼ははいとも簡単にその拳をかわした。
「・・お前、一体何者だ・・?」
さすがの男も、彼の並外れた素早い動きに戸惑いはじめた。
「何者かお前に名乗る義理はない。ただ、一度だけ言う。命が惜しければ、今すぐこの場からうせろ。」
「・・・・分かったよ・・・、ちぇっ!!」
彼の只ならぬ雰囲気に、男は刀を拾うと尻尾を巻いて逃げて行った。
(・・・この人、すごく強い・・。)
涼香は立ち上がり、すぐさま彼にお礼を言った。
「あの、危ないところを助けていただいてありがとうございます・・。」
そして、彼の顔をまじまじと見つめた。
背は涼香よりも高く、するりと長身で驚くほどの美男子だった。
(この人、めちゃくちゃカッコいい・・!!)
あまりの格好よさに、思わず涼香は見とれてしまった。
「いや、別にお礼を言われるまででもない。」
彼は黒縁のメガネをクイッと上げながら言った。
「それよりも、あの子どもをどうにかした方がいいんじゃないか?」
そして彼は先ほど男に殴られた少年を見ながら言った。
「そうだった!!ちょっと、あんた大丈夫?」
涼香ははっとし、倒れている少年に駆け寄り声をかけた。
「・・・助けに・・行かなきゃ・・・。」
少年はうっすらと目を開けた後ポツリと呟いた。
「助けるって一体何を?」
涼香の質問に、少年は目を逸らしながら答えた。
「・・・妹がさらわれたんだ・・。だから、早く助けに行かないと・・。」
少年の言葉を聞き、涼香と謎の青年は顔を見合わせた。
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