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「良かった、気が付いたのね?」
涼香たちは女性の顔を見下ろした。
先ほど、倒れた女性が目を覚ましたのだ。
「さっきは酷い顔色だったけど、大分良くなったみたいだね。」
唐大は安心した様子だった。
「すみません、私、皆さんに迷惑かけちゃって・・。」
女性は布団から起き上った。
「いいのよ、全然気にしないで。」
涼香は笑顔で水を差し出した。
女性は一口水を飲んだ。
「あぁ、おいしい。二日ぶりのお水だわ・・。」
女性の発言に涼香たちは顔を見合わせた。
「二日ぶりって一体どういうこと?あなた、ここに来たとき助けてって言ってたけど、何か関係があるの?」
涼香の質問に女性は、一瞬暗い顔をした後に口を開いた。
「私の名前は水菜と申します。実は私は隣の村から逃げて来たんです。」
「逃げて来たって、一体どうして?」
「実は、私、妖怪に食われそうになったんです。」
水菜と名乗る女性の言っている意味が全く分からず、涼香たちは顔をしかめた。
「どういうこと?」
涼香の質問に水菜はゆっくりと答えた。
「はい。私の村ではここ数日、若い女性たちが次々と連れ去られるという事件が勃発していました。最初は人さらいだろうと言われていましたが、行方不明になった女性たちの身に着けていた着物が次々と血にまみれて、近くの森の奥から発見されたのです。」
「なんて酷い!!」
涼香は怒りを露わにした。
一方、水菜は深刻な顔をした。
「実は一か月ほど前に、私の村にとても美しい美貌を持つ女が現れました。彼女は歩き巫女と名乗り、村の不作を占ったり、病気の子どもの家に行き話を聞いたりと、村人たちは皆、彼女に信頼を寄せるようになりました。その美貌はまるで楊貴妃のようだと、村では彼女を“楊貴妃の巫女様”と呼ぶようになったのです。」
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