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「“楊貴妃”って?」
涼香の質問に伊吹が答える。
「楊貴妃とは中国に存在した人物で、世界三大美女とも言われている。」
水菜は続けた。
「そんなある日、村に住む最年長の村長が言いました。彼女の姿かたちをそっくりそのまま生き写した、女性を数十年前に見たと。その女もまた自身を“歩き巫女”だと名乗っていたと。そして、その時期にも似たような事件が起こっていたそうです。」
「その女、確かに怪しいな。」
伊吹は怪訝そうな顔をした。
「はい、私もその話を聞いて彼女を疑うようになりました。そして、数日前、見てしまったんです。森の中で口の周りにべっとりと血を付けながら、人の血を啜る女の姿を。」
「恐ろしい話だわ。」
「それから私は怖くて怖くて、着の身着のままこの町まで逃げて来たのです。」
水菜は震えながら言った。
「そう、怖かったわよね。でも、無事でよかったわ。」
涼香は水菜の手を握りしめた。
「しかし、その歩き巫女の話、妙だと思わないかい?伊吹君?」
「はい、そう思います。」
唐大の言葉に伊吹も頷いた。
「このまま水菜さんを放っておけないよ!それに水菜さんの村も気になるし!さっそく万屋に戻って、昌美姉ちゃんたちに知らせないと!」
水菜は立ち上がろうとする涼香の手を掴んだ。
「待ってください!私も行きます!」
「でも、水菜さん体は大丈夫なの?」
「はい、大丈夫です!それに、私も自分の村が心配ですし。」
涼香は水菜を見て言った。
「分かったわ!それじゃあ、一緒にこの事件を解決しましょう!!」
「はい!ありがとうございます!!」
水菜は笑顔で言った。
「それじゃあ、僕は何か分かったらすぐに万屋に連絡するよ。」
「お願いします、唐大さん!行こう、伊吹!」
「ああ。」
こうして、涼香たちは町を後にした。
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