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「とにかく傷の手当をしましょう!詳しい話はその後よ!」
涼香たちは町をあとにした。
一方、そのころ竜胆家では、昌美と涼香の父、伊賀丸が神妙な面持ちで話をしていた。
「今言った言葉は本当なの・・?父さん?」
昌美の問いかけに、伊賀丸は深く頷いた。
「あぁ・・。本当だ。奴が帰ってくればこの万屋も何とかなるかもしれん・・。」
「そうね。きっと涼香も大喜びだわ!早く知らせてあげなきゃ!伊吹君が帰ってくるって。」
昌美と伊賀丸は互いの顔を見合わせて微笑んだ。
「いてててっ!!」
「これ位我慢しなさい!男の子でしょ!」
涼香たちは町を出たあと、近くの河原で少年の手当をしていた。
「それで、さっき言ってたことなんだけど。妹がさらわれたってどういうこと?」
涼香の質問に少年は重い口を開いた。
「俺たちの村の近くに霧ヶ山ってところがあるんだ。そこにここ最近人食い鳥が出るようになってさ・・・。」
「人食い鳥?何それ??」
「すげ~でっけ~鳥でさ、山に迷い込んだ人間を骨も残らず食っちまうんだ。俺の父ちゃんも山に行ってもう何日も帰ってこないんだ。」
「そうだったのね・・・。そんな恐ろしい鳥がこの世にいるなんて・・。」
「ああ・・、それで今日の朝、どうしても父ちゃんが死んだなんて信じられなくて。いけないことだと分かってたんだけど、こっそり妹とふたりで父ちゃんを探しに山に行ったんだ。そしたら目の前にでっかい鳥が現れて、妹を連れてっちまったんだ・・・。」
少年は涙を流しながら続けた。
「俺が父ちゃんを探しに行かなければ、妹を連れて行かなければ・・・。」
涼香は少年の背中をそっとさすった。
「誰に助けを求めても、どうせ作り話だろうって笑われて・・・。
だから、せめて自分で妹を助けなきゃと思って・・。そしたら武器が必要だと思ったんだ、・・だから・・・。」
「だから、刀を盗んだのね・・。」
涼香の問いかけに少年は無言で頷いた。
「人食い鳥なんて信じられないが、本当にそんなものが実在したとはな。」
先ほど涼香たちを助けてくれた青年も、涼香たちと一緒に河原に来ていた。
「でも、武器もないんじゃもう無理だよ。妹を助けられない。もしかしたら今頃父ちゃんみたいに人食い鳥に食われたかもしれない」
少年の言葉に涼香はにっこりとほほ笑みながら言った。
「大丈夫!私に任せて!!」
「任せてって、お前みたいな女に一体何ができるって言うんだよ?」
少年は涼香に疑いの眼差しを向けた。
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