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第一話 「万屋は今日も大赤字!!」
あの日の約束を私は今でも覚えている。
そう。
遠い日の約束を・・・。
「涼香ちゃん~!!待ってよ~!!」
「もう!!伊吹、早くしないと置いて行くわよ!」
「待ってってば~!!」
少年は一人の少女を追いかけていた。
彼はいつも彼女の背中を追いかけていた。
一方、彼女はいつも彼の前を歩いていた。
彼らは幼い頃からずっと一緒だった。
そして、これからもずっと一緒に居られると思っていた。
そう、あの日までは・・・・・・。
別れの日は突然やってきた。
「僕、修行の旅になんかに行きたくないよ。ヒック・・・、この忍の里でずっと涼香ちゃんと一緒に居たい・・・。」
少年は涙を流しながら言った。
「私だって、伊吹に行って欲しくない・・。でも、もっと優秀な忍びになるためだもん、しょうがないよ・・・。」
一方、少女も瞳に涙を溜めながら言った。
「・・涼香ちゃん・・・。」
二人はしばらくの間、見つめ合った。
そして、少年が言った。
「涼香ちゃん、手出して・・。」
少女は言われるままに、自身の手を差し出した。
そして、少年は少女に角笛を渡した。
「・・・これ、何・・・?」
「鹿の角笛だよ。涼香ちゃんにあげる。」
「・・ありがとう・・。」
少女はそれを素直に受け取った。
そして、少年は自身の胸元からもうひとつの角笛を取り出した。
「僕が持っている角笛とお揃いなんだ。この角笛をお揃いで持っていれば僕たちはどこに居ても繋がっているよ・・・。」
「・・・うん・・・。」
「僕、もっともっと強い男になってこの忍びの里に帰ってくるから・・。だから、その時までその角笛持っていてくれるかな・・?」
少女は涙を流しながら頷いた。
「必ず、涼香ちゃんが強いって思えるような忍びになって帰ってくるから。その時まで待ってて。」
「うん、待ってるよ・・・。ずっと待ってるから・・・。」
そして、少年は少女に手を振りながら旅立った。
「涼香ちゃん、待っててね~!!」
一方、少女も泣きながら必死で手を振った。
「伊吹~!!必ず帰ってきてね~!!」
少年、少女共に5歳の頃の出来事だった。
そして、あの日から12年もの月日が流れた。
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