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「永井さんから、このアクキー持ってる人が同じ課にいるってお話を聞きまして、是非お話をしてみたいなって……」
彼はスーツのジャケットの袖の先を指でいじりながら、少し照れ臭そうに言う。
その独特な仕草や話し方は、私から見ればオタ丸わかりで何だか可笑しい。
(主要キャラが九人もいるアニメの中で推しが被るとは……)
しかも私の推しキャラは、九人の中でもあまり人気がない。
同志に出会えたことが嬉しくて、私は会社でオタを隠していたことも忘れ、彼と暫く話しこんだ。
最近、断捨離でグッズを捨ててしまったことも……
「そうだったんですか……それは辛い時に声かけちゃいましたね。すみませんでした」
「いえいえ、久しぶりに、こういうお話ができて楽しかったです」
「良かったら、今度イベントにご一緒しませんか?グッズとか買いましょうよ」
「はい……でも今回のことで少し考えてしまって。何個も同じようなグッズ買って、周りから見れば、無駄でくだらないことなんだろうなって」
「そんなもんじゃないですか、趣味なんて」
「そうかな……」
「無駄で大いに結構じゃないですか。履歴書の趣味欄に書けるか書けないかで好きになるか決めたりなんてしないでしょう?」
彼は私にそう言ってコミカルに胸を反らした。
その言葉が妙に腑に落ちて、私の中で雁字搦めになっていた心の糸が、そっとほどけていくような感じがした。
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