夏の思い出

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 仕事終わりに寄ったコンビニで、何か酒のつまみにスナックでも買おうと思いふらついていたところ、偶然それが目に入った。 『夏の思い出』  内容物は、りんご飴の屋台と花火の描かれた背景用のイラスト。  組み立てると縁日のワンシーンを再現出来る小型のフィギュアらしい。    俺はこういう置物系の物はこれまで一度も買ったことがないのだが、何となくそれをスナックと一緒にカゴに入れてしまった。  酒を飲んでる時は適当にテレビを見ている。でもたまにはこういうものを作りながら、それを肴にして一杯やるのも悪くない……と思ったような、思わなかったような。  自分の〈夏の思い出〉を振り返ろうとしたような、そうじゃないような……。  そんな曖昧な感じだから、買ってしまったのはやはり本当になんとなくで『夏の思い出』のバーコードがピッと読み取られている時についついフワフワした思考のままに口を開いてしまい、 「今時のコンビニってこういうの売ってるんですね」  と言ってしまった。  店員の女の子は「はい?」と首を傾げた。 「あ、いや『夏の思い出』がコンビニに売ってるんだなぁって……」 「今時のコンビニはちょっとしたフィギュアくらい置いてますよ」 「……そうですね」  いや今のは商品名を言ったのではなく『夏の思い出』という抽象的な概念がこんなところで売っているのか〜凄いですね〜というユーモアを含んだ言葉だったわけだけど……通じてなかったので俺は曖昧に笑って、商品を受け取って、何変な事言っちゃってんだ俺……という自己嫌悪に目眩を感じながら帰宅した。  そして一杯飲みながら『夏の思い出』を組み立て始めた。  
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