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PLUSULTRA・これより未来
40年以上も昔のことを思い出していると、娘の部屋から再び、鼻を刺激する匂いが漂ってきた。
製作に使っている接着剤だ。
部屋の中は模型や材料で雑然として、とても年ごろの女性の部屋には見えない。
「ごめん、俺のせいだ。申しわけない」
私は妻に頭を下げた。
「もうとっくにあきらめています」
彼女は笑顔をこちらに向けていた。
「うちに連れてきた彼氏が、銀色の人だったら、さすがにちょっと考えるけどね」
おお妻よ、『ちょっと』だけなのか!
私は思う。
実は人生最高の出来事は、面白くて、ウルトラ寛容な妻との出会いだったのだ。
(了)
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