【短編】てのひらにありあまるほどの

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 大きな鉄板が設置されたテーブルに、芳之と向かい合って席に着く。 「ここ何があるのかなぁ」  芳之はウキウキとしながら、腰を下ろすやいなやメニューを手に取る。  今まで彼とは何度となく大阪に来ている。それはセルスクェアのツアーであったり、インストアイベントであったり、彼の専門学校での講義に付き合ってであったり。今日のように、彼のギタークリニックに現場マネージャーとして付き添って来たことも一度や二度ではない。 「ビール頼んでおくぞ?」 「うん! お好み焼き何にしようー」  芳之は機嫌よくサキに返事をすると、すぐにメニューの文字を追い始める。 「うーんと、豚かイカか…どっちもいいなぁー。玉子は入ってて欲しいし…」  期待に満ちた様子で独り言を言い続ける。  それを急かすことなく、サキは微笑んで見守る。 「うわぁ、お餅もあるんだ! エビと…チーズも美味しいし…」  数年前に彼と初めて大阪に来た時、今日のようにお好み焼き屋に入った。  その時、ごく当たり前だとサキが思っていた豚玉を食べた彼は目を丸くした。 「ねぇ、お肉まで入ってるよ!?」  と言って。
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