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「ええええええ!!」
「嘘だろ洞口!! またお前、テキトーに話を盛りやがって!!」
「盛ってないって!! 本当だってば!!」
「えー!? それじゃ詳しく教えろよその子のこと。齢はいくつだ? 名前は? どんな性格? 日本語は話せるのか?」
「齢は俺たちの一つ下の十四歳、名前はシェリル、性格は物静かで控えめ、日本語は話せないけど、表情とジェスチャーでだいたい何とかなるよ」
「キスした時にどんな感じだった?」
「最初は気持ちいいというより、ヌメッとして温かいなって感じ。慣れたら気持ちいいと思うようになった」
矢継ぎ早に浴びせられる質問にもスラスラと答え、彼女の特徴やキスの感触をよどみなく説明していく洞口の様子は、嘘に嘘を重ねてどんどん収拾がつかなくなっていく、普段の洞口とは全く違っていた。これは本当に、コイツはカナダ人のシェリルちゃんと付き合っているのかもしれない――
なんだか、よく分からないけどすごい悔しかった。
それまで、女の子なんてのは、ずっと向こうの手の届かない場所にいる、自分とは無関係の存在だとばかり思っていた。でも、そんなんじゃいけないという変な焦りが急に湧いてきて、別に恋焦がれるほど好きな子が周囲にいたわけじゃないけど、俺も急に彼女が欲しくなった。
翌日からの修学旅行は、どこに行って何をしたのか、正直よく覚えていない。
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