第2章:古民家

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「お嬢さんもそう思うかね。俺たちゃ此処(ここ)を 『翡翠雀(ひすいじゃく)の湖』って呼んでんだ。 この古民家に住んでた智恵(ちえ)って婆さんが 付けた名前さ。 戦後間もない東京で働いていた人でな (しばら)くして帯織島に帰ってきたんだ 若い時ゃそれは綺麗だったな。 そういやお嬢さん何処となく若い時の 智恵さんに似てる気がするな…」 よくあるオジサンの妄言(もうげん)である 源造のそんなちょっかいにも 優里は扱い慣れた様子で口角を上げ 表情だけで上手に答える。 「古民家の奥に智恵さんが使ってた 生活スペースがあるので そこで寝泊まり出来る様になっています。 源造さんが掃除してくれたと思うので 良かったら御覧になって下さい」 気を悪くしたかな?と少し心配した慎太郎が 慌てて気を反らすと優里は会釈だけして 奥の部屋へ入って行った。 「まぁ…良かったじゃねぇか。 住み手が居なきゃ市役所が取り壊す 予定だったんだろ?万々歳だな」 慎太郎は横目で源造を見ながら少しムスッと した表情をしている。 「まぁ…それはそうと今の時期だ… (こころよ)く思わねぇ連中もいるわな」 慎太郎を(なだ)めながら源造が 古民家の暖簾を越しに外を眺める視線の先には手拭(てぬぐ)いで口元を覆い隠しながら此方(こちら)を見て噂話をする島民が幾人(いくにん)か浜辺に居るのが(うかが)えた…
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