プロローグ〈優里〉

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プロローグ〈優里〉

新世界への道標から放たれる光が 漆黒の夜空に輝く星座をより美しく照らし出す 汽船の甲板に(たたず)優里(ゆり)は その灯台の光に新たな希望を期待しながらも 夜霧のベールに包まれた航路の先にある離島に移住生活への漠然とした不安も感じていた。 次第に遠ざかる本州の夜景 視界から消えていく見慣れたネオンライトが 後戻りしないと決意した優里の背中をポンと 押してくれた様な気がした。 潮の薫り、髪を掻き分けて颯爽(さっそう)と吹く風 街で育った優里にとって全てが新鮮に思える。 幼子の様に高鳴る胸の鼓動を抑えながら 彼女は薄霧の(かす)みがかった(みなと)に降り立った…
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