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始まり
わぁぁぁぁぁ!!!
右を見ても、左を見ても。
数えきれない程に賑わう人々が視界に広がっている。
そんな湧き上がる歓声が向けられる先は、上にいる僕と、その隣にいる彼女。
下にいる国民に軽く手を振りながら、ちらりと隣に目を向ける。
漆黒の艶やかな髪は綺麗に纏められて、身に纏う宝石や服は調和していた。
ふわりとした笑みを携えて、彼女もまたこの高揚した国民に対して静かに手を振っていた。
何度か顔を合わせたことはあったが、話したことなど一度もない。
それなのに、こうしてこんな結末を迎えることになったのは隣にいる彼女とは似ても似つかない、見ていて飽きないある女の子がきっかけだ。
とはいえそれは僕個人の理由であって、建前上は国益が理由な訳だけども。
まあ、今更この結婚をどうこうするつもりもないしね。
彼女がそれで幸せになるなら僕は引くべきだったまでで。
今まで数え切れない女の子とはそれなりの関係を築いてきたんだ。
誰が奥さんになっても、何も変わらない。
ただ。
少し気になることがないと言えば、嘘にはなるけど。
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