塔の絵

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画家が次に見た夢は、自分の描いた塔の前で嬉しそうに笑う少女の姿だった。 「嬉しそうだ…良かった、リリ…!」 すると、何もない空間から、すっ、と男が現れ、画家に近寄り頭を下げた。画家に絵を依頼をした男だった。 「…少女を救っていただいたようですね…彼女に想いが強いあなたならと、お願いしてよかった…。」 「あなたは…」 「彼女は彷徨ってしまい、『機会』を逃してしまったのです。」 「君は一人で……リリ…!」 画家の声に気づいたのか振り返った少女に、次第に涙が浮かんだ。 「リリ!」 画家は自分のもとに走ってきた少女を抱きしめて言った。 「俺、力になれた?リリの…」 少女は泣きながら何度も頷いた。 「ごめんな…俺、まだ行けない…もしかしたら、まだ困っている人がいるかもしれない…その人たちの為にまだ描きたいんだ…」 画家の言葉に、少女は笑って頷いた。 「うん!ありがとう…わたし、うれしい…!」 「『役目』が終わったら、必ず行くよ!約束したもんな!リリのこと好きだから…!」 少女は強く頷いた。 穏やかに見つめていた老年の男は、また穏やかに笑って少女に言った。 「さあ、そろそろ行きましょう…」 少女はまた笑って頷き、ゆっくりと塔の前に向かって歩き出す。 画家はそれを見つめた。 塔の前、少女はまたゆっくり振り返り、笑った。 「ありがとう…またね…!」 「リリ、またそばに行くからな…!」 少女は塔に入っていく。 画家はその塔を見つめ続けた。 そして、しばらくすると塔の中から光が現れ、先の見えない塔の天辺とともに空にゆっくり上っていく。 「リリ…!必ず…!!」 少女が頷いた気がした。 光はそのまま、夢の中の真っ白な空に吸い込まれていった。 画家は夢から目覚めてすぐに、ボロボロな部屋の窓に駆け寄り空を見上げた。 「リリ…」 夜空にはたくさんの星。 『…わたしね…生まれかわったらお星さまになりたい…。』 「待ってて…終わったら俺もすぐに行くから……」 その後、画家は来た依頼の絵を、今まで以上に心を込めて描き続けた。 そして、いつの頃からかその家には誰もいなくなった。 光り輝く塔の絵だけがその家に残された。 その絵の塔の前にいる幼い少女だけが、幸せそうに笑っていた。
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