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ちらりと横目で見ると、ヒロキは諦めたように一つ、短い溜め息を吐いた。
トモヤは相変わらず、そっぽを向いている。唇はまえに突き出し、顎にはぼこぼことした影が、いくつもできていた。
ヒロキがビールを口につける。缶の底が天井を向き、テーブルをコンっと鳴らす……と、ヒロキの手がトモヤの頬を掴む。
指を食い込ませ、強引に自分のほうへ向けさせると、二つの唇が、ぐにゃりと潰れるくらい強く、押し付けた。
トモヤの目が、大きく見開く。――と同時に、唇の隙間から、何かが流れ込んでくることに気付く。
それは、トモヤの知らない、『何か』……。
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