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プロローグ
「み、ミユキちゃん…… 」
僕の目の前ではあどけない笑顔を見せる一人の少女。水玉模様の浴衣に肩まで伸びた綺麗な黒髪を後ろで束ねて簪をつけた同級生のミユキちゃんが、祭り会場である、神社の鳥居前で手を振って近づいてきた。だけど僕は気まずさのあまり思わず目を背けるために俯いてしまった。
「遅いよ。歩(あゆむ)君」
「ご、ごめん…… それよりも僕は君に」
僕の顔に近づきながら微笑む彼女と甘く優しい吐息で心臓が高鳴った。女の子になれていない僕の心臓には刺激が強すぎて鼓動が早くなった。
「それよりもお祭り楽しもう」
「ちょ、ちょっと待って! 」
有無を言わさず、彼女は僕のTシャツの脇を右手で摘まみながら笑顔で鳥居を潜った。この時、後ろめたさがあった僕は妙な脂汗をかいてしまい、更に心臓の鼓動は張り裂けるほどまで高鳴っていた。
何故なら、僕が彼女を殺してしまったからだ。
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