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無残にもフレームがゆがんでレンズは粉々だった。僕は残骸を見つめながらその場で涙を流した。
「後、二か月耐えれば夏休みがある…… もう少しの辛抱だ」
袖をめぐり、腕や肩にはいくつもの青あざが見えた。ベランダの手すりに持たれながら心地よい春風に背中を吹かれると 「このまま、天使が天国へ誘ってくれる」 という妄想を懐いてしまい。飛び降りれば楽になるという考えが過ってしまう時があった。
僕は眼鏡の残骸をポケットにしまいながら俯き加減で教室へ帰ると、クラスのみんなの視線が何故だか僕に向けられた。妙な胸騒ぎをしながら机に戻ると、チョークで 「死ね、バカ」 などの落書きが書かれていた。
僕はいつもの事だと思い、無言で濡れた雑巾を使って拭いていると竹本君達は僕姿を撮影しながら馬鹿笑いしていた。だけどクラスのみんなは、怪訝な表情を浮かべるだけだった。
〈みんな、関わって僕みたくなるのが嫌なんだ〉
それに、僕は空気みたいな存在。どうせ誰も相談なんて乗ってくれない。放課後、教室を足早に去る先生の後ろを追いかけて声をかけようとしたが
「あ、あの……先生…… 」〈ダメだ。さらなる報復を恐れて声が出ない……〉
助けを言おうとしたがツバと一緒に飲み込んでしまった。
しかし、青春とは程遠く高校生活を苦痛と怯えた日々を耐えながら過ごした僕にも、天気が起きた。
数日後、この日は朝からクラスがざわついていた。自分から聞けない僕は、皆の話を寝たふりをして聞いた。何でも転校生が来るそうだ。そのお陰で竹本君達からのいじめを受けることなく久しぶりに穏やかに過ごせた。
朝のホームルームで担任の男性教諭から転校生の紹介をされた。僕にはどうせ関係ない事だったので、俯きながら話を聞いていると
「じゃあ、入ってきなさい」
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