2《それぞれの制服》

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2《それぞれの制服》

ポナの季節・2 《それぞれの制服》           女子高生の制服は「女」であることを隠すようにできている。  それは伝統的な乃木坂学院のセーラー服でも、一見斬新な世田谷女学院でもいっしょだ。女であることを感じさせる部分がゆったりとできている。だから多少サイズの違うみなみが、姉の優里の制服も着られる。  姉の制服を持って訪れたみなみの部屋は点けっぱなしのパソコンからお気に入りの作業音楽が流れている。 「乃木坂はね、このリボンの結び目のとこの『N』のイニシャルがいいんだよねえ♡」  制服を広げたみなみは、惚れ惚れするように、そう言った。 「でもさ、そのイニシャルとったら普通のセーラー服じゃん」  ポナは、とんがりコーンを齧りながら、親友の気楽さで遠慮がない。 「それがね、スカートのここんとこにね……」  みなみは、そう言ってスカートの前のヒダを広げた。 「ん……?」 「ここよ、ここ。真ん中から三つ目のヒダにね、エンジの刺繍でNogizakaって入ってんだよ。ほら、そこはかとなくカッコいいでしょ」 「ええ……ああ、これ。優里姉ちゃんがずっと着てたけど、気が付かなかった」 「ポナ、そういうとこ鈍感だからね」 「あ、それはちがうよ。優里姉ちゃんは、あたしよりファッション感覚いいしさ。サイズも四年おいたらピッタリの体型だからね、いつもおさがり。で、じっくり観察なんかしたことないもん。でも、でもさ、高校の制服ぐらいは違うの着たいから、世田谷に行ったんだぞ。あら、みんな食べちゃった」 「世田谷女学院て、どーよ?」  みなみは気前よく新しいとんがりコーンを開けながら聞いてきた。 「う~ん。中身は変わらないと思うよ。ほら、これがうちの学校……あ、新しいのが来てる」  スマホの写真を呼び出してスクロールすると、友だちの奈菜から送られた写真が追加されている。 「あ、いいじゃん!」  世田谷女学院は冬服は丈の短い上着にギンガムチェックのスカート。上着の要所要所にもギンガムチェック。夏服は白のブラウスに同様のギンガムチェック。中間服だけが上から下までギンガムチェックのワンピで、襟や袖口のホワイトが効いている。ポナは、この中間服が一番のオキニだ。 「でも、アップにすると、乃木坂の子と変わんないね」 「そりゃそうよ。偏差値も同じくらいだし、まだ入学して一か月もたたないからね、中身は未だに中坊だよ」 「ねえ、この子イケてんじゃん。完璧なオールディーズって感じ。笑顔もいいな!」  パソコンの作業音楽が軽快なオールディーズになった。  すると、ポナも気づかなかったけど、その子、支倉奈菜には珍しい笑顔。完璧なオールディーズな感じで、悔しいけど自分よりイケてると初めて感じた。  ポナは、パッと見の雰囲気じゃなくて、相手の性格とか人柄で距離が決まってくる。  支倉奈菜は数少ないポナの友だちだけど、写メから受けるような明るさはない。どちらかというと控えめな大人しい子で、ボーっとしていることが多く、配られたプリントを後ろにまわすのを忘れたり、先生の説明をきちんと聞いていないことがある。ポナは席が近いことで、放っておけなくなって、あれこれ面倒を見ているうちに友達になってしまった感じ。そんな奈菜が笑顔で写っているのがとても嬉しかった。  で、今日学校へ来てみると、その支倉奈菜が来ていなかった……。
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