泣き声

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 幼い頃、暗く湿気た場所で暮らしていた。  小さい私は頼りもなく、何度も何度も襲われそうになった。  何十年も地下牢の様な場所で生活をしていた私にも、ようやく光が見えた。  眩しい。外の世界はこんなにも眩しい。  私がこの世界で活躍できるチャンスは一度だけ。  このチャンスを逃してしまえば、もう二度と目を覚まさない。  この一晩を大切に。慎重に。厳重に。  夜明けが来た。  私は大人になった。  泣く、泣く、泣く。  誰か、私の存在に気づいて。  そんな迷惑そうな顔をしないで。  一週間、夏の日差しが照りつける中、ひたすら泣き続けた。  誰か、誰か。私の生きた証を残させて。  体力が尽きる。  私は意識を手放した。
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