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「げぇ……やっぱり中止だってよ」
「まじかよ、楽しみにしてたのに……」
昼休み、スマホのニュースに飛び込んだのは、毎年楽しみにしている野外ロックフェスの中止を告げるものだった。
毎年とは言っても参戦したのは去年が初めてで、2回目となる今年は去年の心得を活かしてもっと楽しくなる予定だった。
去年はあまりの熱気に体調を崩してしまい、とてもじゃないが万全な状態ではなかった。
今年はそんなことのないように、クーラーなしで生活するという修行もしているところだ。
それに、気分が上がる新しいTシャツも買ったし、キャンプ用の椅子も準備して、冷んやりグッズだって揃えたのに。
一緒に行く予定だったクラスの面子が一様に肩を落としている。
「俺たちの夏が……」
窓の外に顔を向け、照り付ける太陽を恨めしく思う。
グラウンドの茶色とその先に囲まれた緑とアスファルトの灰色しかない風景に住む俺たちの、年に一度の楽しみが奪われた。
「今年は連休のお陰で3日間もあるっていうから期待したのにさ……」
「出演アーティスト情報が出るの遅いとは思ってたけど……」
俺たちが騒がしくしているせいで、一緒に行く予定だったやつら以外もこそこそとその話題で話し込んでいる。
俺たちに限らず、クラスの中でも半分はあのフェスに行くんじゃないだろうか。
そのくらい、俺たちの楽しみだった。
「じゃあ、フェスの鎮魂祭しようよ」
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