父ちゃん

彼の始まり

　彼が生まれたのは、昭和９年。
とても貧しい家でしたが、心は、とっても豊か。
世の中の情勢は、なにやら不穏な方向へと進んでいる空気が流れていました。

　彼は、赤ちゃんの頃、お茶目な悪戯をしました。
その時分の我が家には、囲炉裏があり、彼は、囲炉裏の灰を、面白がって茶釜の中に、両手で投げ込み、遊んだらしいです。
　彼の曾祖父は、それを側で、黙って見ていたそうです。おかげで、茶釜の中は、灰だらけ…。
　寒い冬には、囲炉裏の灰の中で、うずくまって寝ていた事もありました。

　彼の母は、生活に追われていて忙しく、彼を充分にかまってあげられていませんでした。