プロローグ

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   寝ている子どもは重いというが。  大人なら、なおのこと。  ましてや、死んでいるのか生きているのかわからない身体なら――。  埃の溜まった床に、大量の血液を使って描いた魔法陣は、慣れない作業ゆえに歪んでいた。  力の残っていない手で、倒れている男の足を掴み、その中心に引きずり込む。   なめくじの這ったような痕が残ってしまい、更に図形が崩れた。  床ではなく、埃に描かれていた部分もあって、既になんだかわからない幾何学模様のようになっている。  もうかなりの量の血を使った気がする。  その場に座り込みそうになるのを堪え、古く変色しているカーテン越しに外を見た。  強い月明かりがぼんやりと薄いそれを通して見えた。  額から埃まじりの汗が伝う。  それまでもが血に見えて、くらりときた。
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