プロローグ~新企画始めました。~

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 私は封筒を手に取ると、心の中で「ありがとう」と呟いた。  最近はメールやSNSで本の感想をくれる読者さんが多いけれど、今でもこうしてファンレターを書いてくれる人もいて、アナログ好きの私としては喜ばしい。  ――さて、肝心の手紙の内容はというと……。 『巻田ナミ先生、こんにちは。 先生の作品、一冊も欠かさず読ませて頂いています。『君に降る雪』の映画も楽しみです。  私は都立晃輪(こうりん)高校二年の武下(たけした)紗希(さき)といいます。今回、〈パルフェ文庫〉で読者の恋愛体験を募集しているということで、私の現在進行形の恋愛を投稿することにしました。  そして、せっかく小説にしてもらえるなら大好きなナミ先生に書いて頂きたくて、先生名指しでお手紙を差し上げました。  実は私、高校の担任の先生と付き合っているんです。彼は社会科の先生で、私の八歳上。私の方から告って付き合い始めました。  でもね、ナミ先生。世間的には、教師と教え子の恋愛ってなかなか理解されないでしょ? 私はそれで悩んでるんです。  先生に小説化してもらって、世の中のたくさんの人に読んでもらえたら、もっと理解してもらえるようになるのかな、と思って。  大好きなナミ先生が、この投書を選んで下さるといいな……。                         武下 紗希     』
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