ばん、ばん、ばん。

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 ***  僕はヨウチューバーデビューする気ないんだけど!と散々主張したが、彼には聞き入れてもらえなかった。顔は出さないようにするし、コントローラー握って実況するメインは自分だからいいだろ、と竜仁に押し切られたのである。僕はその隣で、ゲストとしてやんややんやとツッコミを入れればそれでいいらしい。 ――こいつ、偉そうなこと言っておきながら、一人で実況する勇気がないだけじゃね?  僕はジト目になりながら、ゲーム実況の準備を始める竜仁の背中を見つめていた。  まあ、ホラーゲーム実況そのものは、動画配信の中ではけして珍しいものではない。ナナゾンで売っているようなゲームなのだから、別に危ないものでもないだろう。炎上しかねないような過激な配信をしたり、どこぞのお店の業務妨害をするより遥かにマトモなのは間違いなかった。とりあえず、今日の様子を身守るだけ見守ってやるか、と僕も腹をくくることにする。   幸い、彼はしょっぱなから生放送ではなく、しっかり撮影&編集してからアップする気満々であるらしい。多少事故が起きたとしても、編集でカットすればどうにでもなるだろう。 「はい!皆さんどうもはじめましてー!新人ヨウチューバーのたっつんです!こっちはたっつんの友人です!」 「……え、もしかしてそれが僕のハンドルネームになるの?いい加減すぎない?ひどくない?」 「だって今日限りのゲストじゃんか、友人よ。今後も出てくれるっていうなら、俺がかっこいいハンドルネーム考えてあげるぜ?どこぞの魔王の手下みたいな最高に厨二なヤツ」 「……“たっつんの友人”でいいです、ハイ」  コミュニケーション能力の高さには定評のあるたっつんこと竜仁である。彼は撮影開始すると、すぐに舌に油が回って楽しげに話し始めた。どうやら、ちゃんとカメラは僕達の首から下しか撮さないようになっているらしい。テレビ横の小さなモニターに、僕らの映っている映像が見えるようになっているのだ。  正直なところ、ムキムキで体格がいい竜仁の隣に座っているのは、なかなかしんどい。なんといっても、並の体格であるはずの僕が滅茶苦茶貧相に見えるのである。顔は映っていないのに、なんだろうこの敗北感は。  ゲームはスタートボタンを入れると、すぐに今日の日付や国の設定に入った。日本語対応ではないようだったが、パッケージに反して中身は英語で説明してくれる仕様になっているらしく少し安堵した。僕達も一応現役高校生だ、簡単な英語くらいなら一応わかる。念のためスマホも用意してあるので、どうしてもわからない単語があったらその場で調べるつもりでいた。リスニングはあまり得意ではないけれど、字幕が出るのならいくらでも調べようはあるのである。
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