ばん、ばん、ばん。

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「弾数多くないからな。慎重に狙えよ、たっつん」 「だな。あ、心臓を傷つけちゃいけないから、背中を狙ったら失敗になるっぽい。頭を撃つか、足を撃って一度動きを止めた方が良さそうだけど……う、結構標準ブレるな。いきなり頭は厳しそう。手間だけど両足撃って、標的の動きを止めるか」  そっと標的のジャンパーの男に近づいていく主人公。緊張感のあるBGMが流れ始める。制限時間内に仕留めないと、やっぱり逃げられてしまって失敗になってしまうようだ。慎重に男の左ふとももに狙いを定める竜仁。そして。 「それっ!」  引き金ボタンを、押した。瞬間、鋭い銃声と共に、男の臀部あたりからぱっと血が吹き上がる。男がぐらり、とよろめいた。 「足狙ったのにケツ撃っちまったし!これちょっと狙いが上にズレるっぽいな。もう少し下狙ってみるわ!」  すぐに切り替える竜仁。男が振り返るより前に、右足に狙いを定めた。  今度は見事、男の右の膝裏を弾が貫通した。刹那、周囲の人ごみが悲鳴と共に逃げ出す光景が映し出される。まあ、街中で突然人が銃で撃たれたらこうなるだろう。 「よし、これで動きは止まった、はず!頭撃つぞ頭!」  逃げることもできず、よろめきうつぶせで倒れる男。すぐに竜仁は男の頭を狙いに行くが、今度も微妙に外れてしまい、弾は男の左耳を吹っ飛ばすだけにとどまった。弾はあと二発しかない。その二発を失敗したらゲームオーバーである。 「完全に倒れて止まったところを狙った方がいい、たっつん!あと二発失敗したらいきなりステージ敗退だぞ」 「わかってる!よし、今度は……やる!」  パァン!と鋭い音が響き渡った。男のニット帽がぐしゃりと破れ、弾け、赤い血液と脳漿が一気に吹き出した。そのまま、うつぶせになって動かなくなる男。画面上に“stage1 clear!”の文字が表示される。 「おおおおお!やったなたっつん!おめでとう!一回目にしては上出来なんじゃないか!?」  その時。  僕は最初に感じた違和感もすっかり忘れて、竜仁と共に盛り上がっていたのである。その後表示された、心臓を抉り出すムービーには少々おえっとなったけれども。  そのゲームが知る人ぞ知る有名なものであったのは確かであるようで、彼はその後初の動画投稿でいきなり一万再生を突破したようだった。初回の滑り出しとしては、上々すぎるほど上々である。  勿論たった一万再生では、大した小遣い稼ぎになるわけでもないのだけれど。それでも初心者の僕達が浮かれるには充分な成果だったのは間違いないのだ。  そう、それゆえに。僕達は、全く恐ろしい現実に気づかなかったのである。  あるいはゲームをする前に、タイトルの意味をきちんと調べていれば良かったのだろうか。  例え英語でなかったとしても、翻訳する方法など今のご時世ならいくらでもあったはずなのだから。
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