ばん、ばん、ばん。

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 *** 「どうしてこうなったんだ」  2020年、10月12日月曜日。  僕は今、朝食の席で茫然と朝のニュースを見つめている。 『昨日の夕方十八時頃のことです。此処で、突然銃を持った男が現れ、●●高校に通う二年生、小倉竜仁(おぐらたつひと)さんを背後から撃って殺害しました。小倉さんは左太ももに一発、右膝裏に一発、左耳に一発、左後頭部に一発銃弾を受けて死亡。男は警察が到着する前に、素早くナイフで竜仁さんの体を切り裂き、一部臓器を持ち去ったとのことです。警察は、逃げた男の行方を追っています……』  ネット上では、多数の目撃証言が寄せられ、阿鼻叫喚となっている。  被害者の少年が、ニット帽に緑色のジャンパー姿であったこと。  銃を持った男は黒ずくめであったが、ちらりと見えた顔や上では火傷で爛れていたこと。  一丁目方面に逃げたはずが、いつの間にか煙のように消えてしまっていたこと。  そして男の持ち去った臓器というのが、心臓であったことなど――。 ――あの、ゲームだ。  ガタガタと僕は震えるしかない。偶然だなんて言うには、あまりにも状況が一致しすぎていた。日付もだ。竜仁は、ゲームを始めた日からぴったり一ヶ月後に殺されたのだ。ゲームの中の標的と、全く同じ状況で。  恐ろしいことはそれだけではない。  自分達は、あのあとも何度か面白がってゲームに挑戦し、実況を繰り返しているのだ。その五番目のステージの標的は、やや焦げ茶色の髪をした高校生くらいの少年だった。そう――丁度、僕と同じくらいの背格好の。 ――まさか、まさかまさか……あれは、未来で、現実の誰かを殺すゲーム!?ぼ、僕も、もしかしたら……!  もしゲーム通りならば、同じような形であと八人は死亡することになるだろう。  改めて調べてみた、ゲームのタイトルを思い出す。『Zukünftiger Mord』――ドイツ語で、未来の殺人。ああ、最初にプレイする前に、何かがおかしいと思うことができなかったのか。 ――い、嫌だ……死にたくない!死にたくない!  予定調和だとすれば。  僕が死ぬまであと――たった十日後しか、残ってはいない。
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