ばん、ばん、ばん。

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ばん、ばん、ばん。

 ヨウチューバー王に俺はなる!とどこぞの少年漫画の主人公のようなことを宣言した、友人の竜仁(たつひと)。まあ、こいつらしいと言えばこいつらしいなとも思う。高校のクラスメートである彼は、わかりやすいまでの勉強嫌いで有名だ。とにかく大学受験はしないぞと一年の時から豪語し続けているらしい。  実際、二年になった今でも、進路希望調査で平然と白紙で提出し続け、先生を困らせているツワモノである。そんな彼の呑気さと豪胆さが、小心者の僕にはちょっと羨ましい。なんせこっちは、今から来年の受験シーズンにびくびくと怯えているのである。国公立じゃないと学費出せないと思うからそのつもりでね、なんてとんでもない脅しを母親にかけられているせいだ。確かに、公立と私立でとんでもない学費の差があることは否めないけれど。 「ヨウチューバーで食っていく!俺の将来はこれで決まりだ!」 「あー、ハイハイ」  教室の真ん中でどどーん、と拳を突き上げる彼を、僕は適当にあしらった。  今時の若者として、そういう希望を持つのは珍しいことでもなんでもないかもしれない。人気のヨウチューバー達は今や、動画配信のみならずテレビでもひっぱりだこである。地球征服を目論む小悪党、のコスプレをしてオカルト検証をしてくれる“アサシンZ”。仮面をかぶったお姫様といった出で立ちの“マリン姫”。それと、手しか出てこないがいつも際どい科学実験をしてみんなを楽しませてくれる“おっちゃんず”なんてあたりが有名だろう。あとは、ひたすらボランティア活動に励み、その光景を動画で流す“サクライさん”なんてのもいたはずだ。  一言で動画配信者と言っても、やっていることは千差万別である。最近は、閲覧数やチャンネル登録者数を稼ぐために過激なことをしすぎて、警察に捕まる配信者もいる始末だ。流石に、禁止遊泳区域で泳いで死にかけたり、山で遭難しかかったり、どこぞのお店の営業妨害をするのはさすがにどうかと思う。そういう連中を“迷惑系ヨウチューバー”と呼ぶ人もいるが、同業者からすると“一緒にしないでくれ、あんなのにヨウチューバーなんてつけないでくれ!”というのが本心であるようだ。実際、やっているのがほぼ犯罪という奴らと同類扱いされてはたまったものではないだろう。  過激な配信をする奴が出てくるのには、当然理由がある。  とにかく、動画配信が流行しすぎて、それで稼ごうとする奴らが増えすぎたのだ。要するに、ちょっと面白いことをした程度では全然閲覧数が稼げない。他の人がやらないようなことをする、と考えた時。とにかく批判を浴びかねないような、炎上してでも閲覧数を稼ごうとするような輩が増えるようになってしまったわけだ。  何が言いたいかといえば。ヨウチューバーは一般社会人として稼ぐよりずっと楽しそうに見えて、実は滅茶苦茶修羅の道である、ということだ。
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