9話 地下ダンジョン

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9話 地下ダンジョン

 俺たちは飲食店『イート』に向かう。イートに着き、カランカランと音が響きながらドアを開けて中に入る。 「いらっしゃいませ」  NPCと思われる女の人が横に立っており、席を案内してくれてその場所に座った。テーブルの上にあったタブレットのメニューを開き、料理を選ぶ。 「ムニエル……ルーレルのムニエルって、ルーレルってなんだ?魚か?」 「たぶんそうだと思うよ……サクト君、こんなのどう?」  タブレットに表示されていた料理名は親子丼。辛さも選べて金貨10枚の料理。  親子丼か!いいな……KSOにも親子丼があることに少し驚いたけど。辛さは0~10。他の料理は、カエル焼き…… 「気持ち悪!!!」  おもわず叫んでしまう。店内にいた人にうるさいという視線を向けられる。 「す、すみません……でもさすがにこれは、気持ち悪いだろ」 「確かにね……」  3人ともうなずきまたメニューを見つめる。アイルは山菜天ぷらというもので、エミはオムライス。ユイはルーレルのムニエルに決めてタブレットで注文した。俺は男を見せようと親子丼の辛さ10を注文。  4分ほど経ったとき、オムライスや魚の焼けた良いにおいが漂ってくる。それと同時に足音が聞こえてきた。NPCが多いためすぐに料理が運ばれてきたのだ。 「こちら、山菜天ぷら、オムライス、ルーレルのムニエルでございます」  お皿が宙に浮いている。その料理が乗ったお皿がゆっくりとテーブルに置かれていく。 「美味しそう~!!!!!」  目をキラキラさせてエミとユイは写真を撮りたがり、アイルは速く食べようとして箸を何回も落として騒いでいる。オムライスはトロトロの卵がのせられていてこちらも溶けそうな見た目。山菜の天ぷらはヘルシーそう。ルーレルのムニエルは、鮭のような魚にオレンジ色のたれのようなものがかかっており、箸を入れるとすぐにほぐれる。 「やばい!俺のはまだなのかよ~!」  お腹が鳴り、そろそろ限界を迎えそうになった時、足音が聞こえた。 「やっと来た!!!」  後ろを向くと白い騎士服を着た人が大勢押し寄せてくる。 「副リーダー様、ここにおられましたか!探しましたよ!」 「あ、ジンク。速かったですね。もう少し遅く来ても良かったのですが?」 「申し訳ございません。ですが遅いよりかはマシなのでは?」  ジンクがそう言うとユイはジンクをにらむ。すると怯えながら頭を下げてまた謝った。俺はいらいらしながら待ち続けて20分。アイルとエミはもう食べ終わってしまった。 「あー!遅い!!まだなのかよ……腹減ったよ」  大勢の騎士服の人たちに見守られながら待ち続ける。 「大変お待たせしました。親子丼、辛さ10でございます」  NPCの声が天使のように聞こえた。後ろを向くと光り輝く黄金の親子丼……と思いきや真っ赤でぐつぐつと音を立てている料理。においからもう辛さが口の中に広がる。 「えーっと……」 「ごゆっくりどうぞ」  この声が悪魔の声に変わる。唐辛子が周りに入っていて真ん中には山椒、一味、七味などが全部かかっている悪魔の食べ物。 「い、いただきまーす……」  恐る恐る悪魔の食べ物を口に運ぶ。肉とご飯が真っ赤。ぱくっと口の中に入れて噛んだ。2、3秒は何ともない。しかし急に味覚システムや痛覚システムが破壊されのか、全身に雷が落ち、口の中が燃えているかのように熱い。 「やばいやばい!!!あ――――!!!!!!」  叫び声が店内に響き渡った。  これはやばすぎる!!ボス攻略とか人が死んだところを見るより断然しんどいし辛いんだけど!?やばいたばいって!!! 「無理!!誰か!そうだ!お前食ってくれ!」  俺はジンクに真っ赤な食べ物を運び、口に入れた。 「……お!これは美味しいですね!!もしよろしければもう少しくださらないでしょうか?」  俺たちや騎士服の人たちが驚いた表情でジンクを見る。  あの尋常じゃない辛さが美味しい、だと……?こいつ味覚システムぶっ壊れてるんじゃないのか?スゲーな。  バクバクと食べ進めて2分ほどで完食してしまった。 「すごいけど、私たちはこれから殺人ギルドの討伐についての会議をはじめましょう」  騎士服の人たちは返事をして話を聞く。 「地下ダンジョンについて、ジンク、何か分かりましたか?」  箸をテーブルに置き、アイテムストレージから紙の地図をオブジェクト化する。俺はメインメニューにあるマップを使えばいいのではと思いながらも何も言わずジンクが取り出した地図を見た。 「この階段はなんだ?赤いバツの目印がされてあるが」 「これが2階層、地下ダンジョンへの入り口となります。行ける人数は20人程度となるでしょう。ここに集まっている人数は副リーダーさんたちを含め、30人。10人は行くことをやめるという形となります」  一斉に指を刺したのはアイル。 「なんで俺が抜けるんだ!?」  確かに戦力にならないかもしれないけど一応俺のパーティーメンバーだし、連れてってやらないとなんかな。 「大丈夫だ、こいつは戦力になる。騎士服の人から10人抜けてくれないかな?」 「私のほうからもお願いします」  ユイのサポートのおかげで騎士服の人たちは納得して10人が飲食店から出て行った。その後作戦を立て、今日にもう行こうということになった。作戦は地下ダンジョンにある殺人ギルドのアジトへついたときにアイテムで霧を5秒間発生させる『フォグボム』を使う。霧であまり動かなくなった奴を斬る。ここにいる人たちは服や防具に黄色の印をつけて分かるようにするらしい。 「分かったけど、5秒間だから別に印をつけなくていいだろ」  ユイは念のためと言い、俺は一旦納得して話が続く。 「地下ダンジョンにはモンスターがかなり湧くらしい。モンスター名は『リザード』。2足歩行のトカゲモンスター。アイルソードを持っています、そしてソードスキルまで使うとのこと」  ソードスキルを使うのか……まあ、協力技みたいなことをしていたら大丈夫だろう。 「情報はこれで以上です。では、向かいましょうか」  騎士服の人たちは飲食店を出た。俺たちも出ようとするが、俺のお腹が鳴る。 「まだ腹減ってたんだ……」  お腹を抱えているとユイが俺の肩をポンポンと叩き、茶色のパンを渡す。 「くれるのか!?マジか!ありがとう!」  すぐに口の中に入れて飲み込む。さっきの悪魔の食べ物より物凄く甘い。ユイが神様に見えてくるほど幸せになった。ユイは微笑んだあと、飲食店を出て、ジンクと話始める。俺も一気に食べてドアを開けて話をした後、さっそく2階層の地下ダンジョンへ向かった。  * 「こちらに向かってきている奴らがいる」  HYUの前には70人の殺人ギルドメンバー。サクトが来る前に人数を増やしておいたのだ。 「おい、突然来てリーダー。お前、いったい何者なんだよ」  白い髪や顔を覆うように黒いフードをかぶった男が言う。他の人たちも「そうだぞ!」と言いながら曲刀(きょくとう)を鞘から取り出し、弧に描く刃をHYUに向ける。 「私の名前はHYUであり託である。君たちは知らないだろうが最強プレイヤーだ」  こいつは何を言っているんだと言わんばかりの表情を浮かべ、赤髪の男で体つきの良く腕も太い、そして他のメンバーにはない特徴的な大剣が背中にある。こいつが元リーダー、『VAN』。VANは少しづつHYUに近づいていく。 「Be silent!!」  黙ってろ、と英語で話す。 「君は日本で生まれていないのか。だが日本にいる。面白い。日本語はしゃべれるか?」  そう聞くと怒り気味でうなずいた。背中にある大剣を手に取り構える。 「その剣は、レアソードを持っているな。ハゲイトウの剣。決して壊れることのなく、斬った相手のHPを吸い取り自分の力へと変える」  驚いた表情をしながら少し笑みを浮かべる。VANはHYUの肩に手を置き、リーダーとして認めた。 「お前といたら楽しめそうだ。Please delight me」  俺をたのしませてくれと言い、HYUの隣に立つ。 「君が言ってくれると助かる。これから剣を持ち、戦いの準備をしろ!場所は私が指示をする!ついてこい!」  そう言い、振り返って歩き始めると「おー!」と全員が剣を上にあげてHYUについて行った。  * 「ここです」  ジンクが指刺した場所を向くとそこには下へと続く階段が見えた。階段の下を覗いてみると暗闇でよくわからない。 「明かりとかはいいのか?」 「自動センサーがあり、決められた場所に行くとシステムによって明かりがつくと思います」  そう言いながら鞘から青い剣を抜き階段を下りていく。するとジンクが言った通り、横に掛けられていた、火が消えた松明のようなものが青色に光る。 「我々はこの階段を下りたら殺人ギルドと戦っていくこととなる!気を引き締めていくぞ!!!」 「おーーーー!!!!」  鞘から鋼の剣を取り出し、上にあげて大声を上げた。俺も戦闘モードに意識を切り替え、背中にある鞘から2つの剣を手に取り取り出す。  かたっかたっと空間の中で足音が響き渡っていく。緊張した空気。その時。  キ―――ン!!!  剣の音が響き渡った。最初は剣を階段に落としてしまった人がいたのかと思ったが、違った。階段をすべて下りた時、広い空間に出る。白い床で100人入ってもいけるほど広い。その場所で殺人ギルドに先制攻撃を俺たちは仕掛けられてしまった。 「フハハハハハ!!!さあ!遊ぼうぜ!!」  大剣を俺に向けて振り下ろす。すぐさま剣をクロスにしてブロックするが2メートルほど吹き飛ばされる。 「うるさい!!お前たちは人を殺した殺人者!その罪を償わなければならないんだ!!」  男は首をかしげた。 「あ?楽しければ、それでいい!!死ね!!」  ギーンと音が鳴り戦いの幕を開けた。
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